うけとめる床、かえられる床

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〈入替えられた新しい畳は、実はずいぶん変化してきているものなんです。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日はKJWORKS本社「くらしの杜」での打合せの後、伊丹市のお客さまのところへ。先日このお宅に来られた業者さんが、もう一度来てくれることになっていたからです。

 

その業者さんは、畳屋さん。築13年を経たこのお宅の、だいぶ傷んでしまった畳を取り替える作業なんです。先日は現状の実測をし、それに合わせてつくった畳を、今日は納めに来てくださいました。

 

冒頭の写真のように、ぴしりと綺麗に納まった新しい畳。とても気持ちがいいですね。でもこの畳、昔からあるモノとはだいぶ違ってきているんですよ。

 

その昔、日本の建物に畳がない頃、床は全て板張りでした。今の合板フローリングとは全く違う無垢の板ではありますが、でも火鉢くらいしか暖房器具のないそのころの家屋では、板は冷たく硬いものでした。

 

そこに、最初は「板床に置くもの」として畳が登場。それが徐々に面積を占めるようになり、廊下や縁側は板床、部屋は畳敷き、というように変化してきたんです。

 

そしてついに、日本の建物は、畳の大きさと、それが何枚敷けるかを基準としてその柱間寸法を決めるようになった。1:2の比率でつくられた畳は全ての寸法基準となり、それが故に、家のどこでも入れ替えて敷けるようになりました。

 

しかしその後、畳はその「基準」の役割を失い、建物は単に柱間寸法そのものを基準にするように変化し、今に至ります。ですから今は、家を建ててから、その敷き詰める部分の大きさを計測して、それに合わせて畳を敷くようになっているんです。

 

そして昨今、今日の冒頭の写真の畳もそうですが、いわゆる「畳表(たたみおもて)」が、徐々に藺草(いぐさ)ではなくなってきています。この写真の畳の面は、和紙です。紙をこよりのように撚って、それを編んであるんです。表面のアップはこんな感じ。

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丈夫な紙のこよりを使う畳には、藺草を保護するための「畳縁(たたみべり)」が不要になり、こうした縁無し畳が可能になりました。こうして半畳の畳を市松に敷くと、ぐっとモダンな感じですね。

 

色も、藺草のように草色から徐々に色褪せて黄色くなるということがありません。最初からずっと、同じ色。紙を染めることで、様々な色の畳が可能になるんです。

 

このように、畳というモノも随分と変わってきています。表も藺草でなく、色も違うし、縁もない。果たしてこれを畳と呼んでよいものか、という気も少しするくらいの変化だとも言えるでしょう。

 

しかし、やっぱりこうして敷き詰められると、なんとも言えない安心感がある。適度な柔らかさをもち、板よりも断熱性能もよく、人間が床に座り、時には寝転ぶことを受け止めてくれる床。そして、傷んだ時には容易に取り替えることが出来、その性能を回復できる床。

 

西洋ではその役目はカーペットが果たす。そして日本人が住む家でそのような役目を果たすものに、私たちは暮らしの中の安らぎを覚えるように、最早刷り込まれているのではないかと思います。

 

素材や色が少々変わろうと、そのDNAに刻み込まれたこの床材への安心感は揺らがない。その感覚を呼び覚ますもの、それはやはり「畳」と呼んでいいのでしょうね。

 

新品の畳がもたらす清々しさ、心地よさ。どこかで自分自身も、今は自宅にないこの感覚を求めているような、そんな気がした今日の入替え作業でした。

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