海を知るうつわ

2015-12-22 18.41.46

〈美味しい料理は、盛られたうつわが膨らませるイメージによって、さらにその魅力を増すのでした。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日はめずらしく料理の写真からはじまりました。昨日の夜、友人二人と「今年一年おつかれさま」の会があり、素敵な店を教えてもらって一緒に楽しい時間を過ごした、その時の写真です。

 

前菜盛り合わせの料理も素晴らしいのですが、しかし私が興味を惹かれて皆さんに見ていただきたいのは、料理ではなく、その器となっているモノ。とてもよい色艶の木に、盛りつけられていますね。

 

その色合い、杢(もく)の浮きだした木目の鮮やかさ、そして全体に漂うワイルド感。その迫力にびっくりして、料理に目が行きません(笑)。友人が店員さんに聞くと、この器は「流木」を利用したものなのだというお答えでした。

 

流木(りゅうぼく)とは、河川から海に流れ込んだ樹木が、海岸に漂流物として打ち上げられたものを言います。海に流れ込む主な原因は、山での土砂崩れなどが多いようですね。

 

最近は「流木アート」と呼ばれるもの、その作家さんも多いようで、割と馴染みある言葉になってきている感があります。木の家づくりの中でも、例えばドアハンドルなどに流木を使ってみたい、というお客さまも時々おられたりしますよ。

 

流木というと、潮に流されているうちに、木肌がすべすべになり、材が固くなっている、というイメージがあります。これは木材の中の腐敗しやすい部分が、漂流をしているうちに取れてしまって、堅いところが残ったため、なのだそう。

 

この前菜の器になっている流木はとても大きく、この形状から考えておそらく枝ではなく、樹木の根に近い部分でしょう。柔らかい部分が削ぎ落とされたためか、ずっしりと重い。

 

そして、その硬い表面を削り、美しく磨き上げ、ワックスで濡れ色に仕上げた、「流木のうつわ」。人間にはつくり出し得ないその風合いと、それに料理を盛るという発想にとても惹かれて、しばらく眺めていました。

 

いまは前菜のための器になっているけれど、お前は海に漂っていたんだなあ。そんなことを思いながらその木肌を見ていると、ワイルドに踊るような木目が、だんだんと波立つ水面のように見えてくるんです。

 

潮の流れ、海の風を知っている流木がうつわになること。それは使う人に色んなイメージを想起させ、それがまた盛られた料理に膨らみをもたせてくれる、そう感じましたね。出来れば前菜盛り合わせより、海の幸を盛るほうがいいな、とも。

 

日本人は古来、木のうつわを椀として使ってきました。そうした美しく加工された木材の器も素晴らしい日本の伝統ですが、このような巧まざる美、潮に揉まれて出来上がった素朴な持ち味を活かした食器というのも、また面白い。

 

海からきたうつわには、単に木材であること以上のイメージの膨らみがありました。そしてそれが、さらに美味しくお料理をいただくよき時間を演出してくれる、昨日はそんな夕べだったのでした。


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