思考の設計者

2016-01-07 15.48.56

『1000%の建築 ~ぼくは勘違いしながら生きてきた』   谷尻誠 著   エクスナレッジ

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

久しぶりに、建築家さんが書いた本を読みました。今や業界ではすっかり有名になっておられる谷尻誠氏の、作品集ではなく、著書です。3年前に刊行されたものですが、最近になってある書評を読み、興味を惹かれたのでした。

 

実は、著者のつくる建築は、その世に出た当初から、かなり気になるものでした。当初ということは住宅建築が多いのですが、どれもなかなか突き抜けているのに、一貫した「作風」がない。

 

建築家にも色んなタイプがあって、仕上げやディテールにこだわる人もいれば、間取りなどもっと根本的な部分にこだわる人もいる。私が見たところ、著者は「独自のコンセプト」に重きをおく人物のように思われました。

 

そして本書を手に取ったら、そのタイトルもまた独創的です。この「勘違い」という言葉が本書を貫くキーワード。それは、既成概念をとりはらい、オリジナルな視点、ものの考え方をもつための方法論だと私には理解できました。

 

コンセプトに重きをおくというよりも、それ以前の「建築」や「空間」というものについて皆があたり前のようにもっている認識を、一旦白紙にすること、ゼロベースでつかみ直すこと、そこを重んじて建築をつくっている。そういう方なんですね。

 

「勘違いの建築」という章には、そうした空間認識についての独特の氏の考えが綴られています。「面積ではなく体験という広さ」、「音で見る」など、心地よく刺激を受ける言葉もたくさん。

 

なるほど、空間認識と、そこから生まれる思考そのものを設計し直すことで、とても独創的な空間づくりが実現しているのでしょう。これは言葉で言うのは簡単ですが、行為としては非常に難しいはず。さほどに「常識」という呪縛は人を捉えて離さないものですから。

 

本書には知人からの寄稿もあって、そこにこんな言葉を見つけました。「彼にとって勘違いとは、オリジナルな視点を持ち続けるために自分でデザインした楽しい仕掛け」と。

 

そして本書は、装丁やなかの文とイラストのレイアウトなどもかなり凝ったもの。水の波紋のかたちに文が並んでいたりするんです。読みにくくはあるものの、これもまた本のあり方の再設計なのかもしれませんね。

 

そうした著者の基本姿勢というか「生き方」に楽しく鼓舞されるような一冊です。読了後に著者のブログで見たこの言葉にも、思考を再設計するためのヒントを感じた私でした。

*************************************************************************************************************

世の中は意味があるものや、機能のあるものに価値を見いだしていく傾向があります。だからこそ、意味が生まれる前の無意味な状態への意識が必要だと最近はよく考えます。

星ひとつひとつに意味があったとしたならば、きっと星座は生まれなかったでしょう。無意味があるから意味が生まれるということ、大切にしていきたいものです。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です