苦吟の記憶

2016-01-12 09.18.39

〈年月を経て深みを増す木の家。刻まれた「産みの苦しみ」を見るのも嬉しいものです。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日は、もうすぐ築14年になろうとする木の家とお客さまのところへ、神戸市垂水区までお伺いしてきました。洗面所の配管が傷んできたことによるメンテナンスの打合せでした。

 

本当に久しぶりにお邪魔したこのお宅、私がその間取りを検討していたのは15年前。KJWORKSでの私の経歴でも、初期の方のお宅です。まずは「たいへんご無沙汰しております」とお客さまにご挨拶。

 

その後メンテナンス箇所を確認し、対応をお話した後は、しばらく家の中を見せていただきました。やはり14年の年月が刻まれた家の雰囲気は、なんとも言えない風格というか、味わいが感じられますね。

 

冒頭の写真は、1階のキッチンカウンターの上にある梁と、それで支えられている梁、そして下屋になっている部分の屋根です。屋根の断熱が垂木よりも上にあるこのつくり方は、KJWORKSのその頃の標準的な仕様で、私にとってはとても懐かしい。

 

そしてこの「梁で梁を受ける」という部分が、この家のプランを考える時に一番苦労した部分。上の梁は2階の外壁を受ける重要な梁なので、普通に構造を想定していくと、キッチンカウンターの真ん中に柱が出てきてしまいます。

 

しかし、間取りとしてはそこがキッチンであるべき。間取りと構造との調停にずいぶんと悩んだ末、ある時ひらめいたのが、この立体架構でした。梁と梁の間にある「束(つか)」を太くして意匠性を高めることも、同時に思いついたもの。

 

それを間取りと一緒にお客さまにご提案し、木が見えるのが好きなお客さまも賛同くださって、このかたちが採用されました。まだまだプランの経験が豊富とはいえない頃の私にとってそれは、苦労した分だけ本当に嬉しかったものです。

 

そうして思い悩んだ末に実現させた部分は、いつまで経っても忘れないものですね。今日家の中に入れていただいて、やはり真っ先にその部分へと視線が向かうんです。

 

束でつながれた2つの梁もぐっと色艶をまして、さらに力強く、味わい深く、その「構造の美」を魅せてくれている。造付家具の面材として使われた桧の集成材パネルも、年季が入って質感が深まっていました。

 

こうした築年数を重ねた家を見るにつけ、やはり出来上がった時が一番でなく、さらに段々とよくなっていくという、木の家の素晴らしさを痛感します。そして、つくる際に「産みの苦しみ」というか、色々と苦吟した想い出は、なおさら家への愛着を深めてくれる。

 

それはつくり手である私だけでなく、一緒につくっているお客さまの方も同じでしょう。そうした「想い出」こそが、家を長持ちさせてくれる。そう私は信じています。

 

今回のような設備系、そして外部などにも徐々に手を入れていきながら、ずっと生き続けてくれる家。こうした「家守り」の中で、つくった時の自分に戻ることが出来るのも、この志事のご褒美だなあ、なんて思ったことでした。


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