歴史とコラボ

2016-02-08

〈古い建物が、その歴史を漂わせつつ生まれ変わるのは、建築屋としてとても嬉しいことです。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

昨日、築120年の木の家を活かした藤谷商店さんと、その後に「茶寮 つぼ市」へ寄りながら、私の頭にはあるKJWORKSの施工事例が浮かんでいました。そうしたら今日、「店舗もつくりますか」とのお問合せもあったので、ご回答も兼ねて、その事例をご紹介しましょう。

 

冒頭の写真がそれ。奈良は吉野山、金峯山寺の参道にある柿の葉寿司のお店「やっこ」です。こちらはこの地で永く営業されている老舗で、元の建物はこちらも築100年を超えています。

 

「吉野建て」と呼ばれる、崖にすがりつくように建てる構法。その古い構造体を部分的に補強しながら活かし、お店を一旦お休みして建物全体をリフォームし、新規にリニューアルオープンしたものなんですよ。

 

元の骨組みは活かせるものを活かし、傷んだものは新しく取り替えました。そして、インテリア全体の色合いを、古美た(ふるびた)柱や梁に合わせて「古色塗装」で仕上げています。

 

リフォーム前は全て畳敷きで、本当に古い民家の中で食事している感じでした。それも私は好きでしたが、リニューアルにあたって椅子席も設け、この写真の雰囲気とは別に、もっとすっきりとしたインテリアのカフェコーナーも設けられました。

 

瓦葺きの建物の外観はほぼ同じイメージで仕上げ、参道の風景を変えてしまわないように配慮しています。しかし、内部はずっとお店として使いやすくし、柿の葉寿司のお持ち帰りカウンターとショーケース周りも、ぐっとモダンになりましたね。

 

吉野山に行かれる際には是非のぞいてみていただきたいお店です。リフォーム前の面影は、こと内部についてはあまり残っていませんが、元の材料がだいぶ傷んでいましたから、それも仕方のないことでしょう。

 

思うに、昨日の藤谷商店さん、そして茶寮つぼ市さんも、それぞれに模索されたはずです。元の歴史ある建物と、新しいその空間の使われ方との間で、どこをどう活かし、どう変化させるのかを。

 

古民家改修などもそうですが、ここが古い木造建築を今に活かすにあたって、一番大事な考えどころだと思います。構造、断熱、開口部、仕上げ、それぞれにどう変え、どう遺すか。

 

全くそのままに使えれば一番いいのでしょうが、なかなかそうはいかないことの方が多い。藤谷商店さんはほぼ原型を維持しておられましたが、やはり冬は寒いとおっしゃっておられました。そうした性能面をどう確保するのかも、重要なポイントでしょう。

 

傷みの補修、性能の確保、そして「歴史」を感じさせる見え方の演出。それらをバランス良く実現していければ、そこからさらにその建物が生き永らえる可能性は高まるはず。

 

ひとつひとつ、建物によって答えはおのずと違います。しかし、つくり手がそのバランスを取るべく、その建物が生きてきた歴史に敬意を払い、なおかつそこから温故知新となるような道を模索する、その不断の努力が答えを導くのだと思います。その模索の道はまさに、建物が経てきた歴史とのコラボレーション。

 

私は古い建物が好きです。ずっと遺る建物も、ただ朽ちていくのでなく、新しい用途を得て現代に溌溂と蘇る、そんな姿も。そう、家であれ、お店であれ、建物は人と共にあってこそ輝くのですから。


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