森から街へ

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〈木の家の構造見学会は、木材の見学会でもありました。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日は、昨日のブログに書いたとおり、木の家のお引渡しがありました。それへの想いは昨日の記事をご参照いただくとして、その前に一件、木の家の見学会を観に行ってきたんです。

 

冒頭の写真がその様子。見学会と言っても、完成のタイミングではなく、いわゆる「構造見学会」というやつですね。この現場、いつもの小国杉に加えて、新しく採用された木材が使われているんですよ。

 

写真がいまひとつで申し訳ありませんが、写真の構造体、梁が島根県産の松材になっています。私たちの業界では「地松」と呼んだりする、国産赤松材の梁です。立派ですね。

 

今日は家の構造を見ていただくのに加え、その「島根県産材の見学会」でもあったのです。ずっと木の家をつくっている私たちには、杉の梁との違いは一目瞭然。今日も、ああやっぱり松の顔してるなあ、と思いました。

 

いわゆる「古民家」と呼ばれるような昔の木の家では、ほとんどの梁が地松で、それも「ゴロンボ」と呼ばれる曲がった丸太材だったりします。それだけ松材は曲げに強いとされ、日本の家に必須のものでした。

 

さて、ではなぜ、「島根県産材の見学会」が構造段階で開催されたのでしょうか?それは、この木の家に県から補助金が降りるから。県産材を使うこと、そのアピール活動について、お客さまに補助金の交付があるんです。

 

この補助金制度をもつ林産地はいくつもあって、いつも使っている阿蘇小国杉にも、町の森林組合からの補助金があります。もちろん枠はあるので、全ての家がもらえるわけではありませんが。土佐杉の高知県にもありましたね。

 

でも、林産地に近いところ、あるいは県内での使用だけでなく、こうして県外の木の家にも補助金交付があるというのは、考えてみればなかなかすごいことではないでしょうか。木の家を選んでくれた貴方に、森から街へ、プレゼント。

 

それは良いことではあるのですが、私などは少し寂しい気分にさせられる部分もあります。なぜかというと、それは補助金制度をつくって奨励しないことには県産木材が使ってもらえない、という現実の裏返しだから。

 

森林県と呼ばれる地域はたくさんあり、どこも戦後植林された樹々が充分な大きさと強度をもつようになっています。でも、今つくられている新築住宅の中で、いったい何パーセントがこうした森の樹々を木材として使った「木の家」でしょうか。

 

植林した樹々が育ち、それらを長持ちする木の家にすることで、CO2を木材という形で固定し、そしてまた山に木を植える。こうした循環が生きている地域は、ほんの少しの限られたところだけ、というのが日本の林業の「いま」なんですね。

 

私たちは、そうした「森から街へ、そしてまた森へ」という木材やお金や人の「循環」こそが、日本人の生きるべき持続可能な道だと思いますし、そのために、ほんの微力ながら木の家をつくり続けているつもりです。

 

補助金がもらえるから、木の家にした方がいいですよ。それはほんの表面的なお話で、本質ではない。お客さまへのプレゼントとして嬉しいことですが、それが木の家をつくる理由ではない。

 

島根県産の地松材もまた、小国杉と同様、地域の森の恵みに他なりません。木材とは「育てることが出来る資源」であり、だからこそ循環が成り立つという、このあたり前で、でも忘れかけている真実。

 

地松の立派な梁を見ながら、そのアピールを止めてはいけないと改めて思いましたし、この一文もそれに少しでも役立てば嬉しいことです。


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