名前から時間旅行

2016-03-07B

『大阪 地名の由来を歩く』   若一光司 著   ベスト新書

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

ぐっと暖かくなり、春めいてきました。こうなると、あちこち出かけたくなりますね。散歩がてらの街歩きもまた始めようかな、と思ったりしていたところへタイミングよく知った本書、まずは生まれ育った大阪から、と早速入手。

 

地名、面白いですよね。街を車で走っていて、読めない地名があったりすると、俄然その場所に興味が湧いてきたりします。本書は、その「地名」を入口にして、その由来やエピソードから大阪の歴史を知り、楽しもうという一冊です。

 

しかもタイトルの通り、単なる文献調査ではありません。大阪は豊中の生まれである著者が、実際にひとつひとつ現地を訪ね歩き、その謎を探るというもの。堅苦しくなく丁寧な文章で、最後まで楽しく読ませます。

 

そもそも何故「大阪」なのか。「大坂」「上方」「浪速」「難波」などの呼び名の歴史なども、実際のところ大阪府民でもあまり理解している人は少ないでしょう。地名とは自分が生まれた時からあって、空気のようなものですから。

 

でも、無論それぞれの地名には由来がある。古代からのもの、中世からのもの、幕藩体制からのもの、廃藩置県以降のもの、色んな時代のものが入り混じっているというのが現実なんですね。

 

どの地域にも同じようにあるのだと思うのですが、大阪にも色々と「難読地名」があります。「放出(はなてん)」などは有名ですが、そうした「知らないと読めない地名」がなぜそうなったかという話、その色んな説なども網羅されていて、とても面白い。

 

約50項目、触れられた地名は約200というなかなかの数ですが、全てランダムなのではなく、章ごとにテーマが設定されています。それも本書の読みやすさを助長してくれていますね。例えばこんな感じ。

・大阪の食道楽も市場のおかげ

・「八百八橋」の多くが町橋だった

・大阪市内の熊野街道を歩く

・交野ケ原に刻まれた七夕伝説の謎

・文学に描かれた大阪の人と風土

 

この章タイトルにある「交野ケ原」の「交野(かたの)」も、知らなければまず読めないでしょうね。そして私もここに七夕伝説があるというのは知りませんでした。でも、そういえばその辺りに「天の川」という川があるんですよね。

 

こうして、自分が何となく把握している地域のこうした歴史や由来の本は、入っていきやすくて楽しい。そして、自分にとってのあたり前な地名が、実は知らなければ読めない、ということに逆に気づいたりします。その、自分の客観化も面白い。

 

読むと行きたくなるかどうかが、こうした本が自分に合っているかどうかだと思いますが、本書は行きたくなった方々のためにアクセス方法や、さらには地名索引も掲載してあり、そのあたりには余念がありません。

 

最後にちょっと話が飛びますが、「大阪高低差学会」という団体があります。こちらは「地形」と「歴史」を結びつけて、歩いて楽しむ、というフィールドワークをしてらっしゃる。それと本書の内容は、またリンクしているはずですね。

 

地名・地形・歴史。その三つは大いにつながりをもち、永い歴史をもつ関西というエリアの古の姿を今に伝えています。そんなドラマがふらりお出かけへと誘ってくれるような、春の陽気にとてもいい一冊だと感じました。

 

さあ、次にはここ芦屋を含む兵庫県の似た本を読むつもり。それもまた楽しみなんです。


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