やっつとひとつ

20160325-160749

〈軒裏の天井と外壁、いま見た目の悪い方が、何倍も手間がかかっているんです。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日も、昨日行ってきた宝塚の現場からひとつ、KJWORKSの木の家づくりのやり方について、皆さんにご紹介いたしましょう。冒頭の写真は、この木の家の玄関ポーチあたりの、昨日の状況です。

 

左側に少し見ているのが玄関ドアが付く木の枠。サイドと正面に見えている黒い壁は、外壁になるところの現状。そして上に見えているのは、ポーチに深く掛かっている屋根の裏側。木の天井ですね。

 

現場でこの状況を見ていて、軒裏にくらべて外壁はずいぶん時間がかかるなあ、と改めて感じていました。その、時間がかかることについて、今日は皆さんに知っていただきたく思ったという次第。

 

それは、木の家の柱や梁が立ったところから、外壁が仕上がるまでに、いくつの「層」が施工工程として存在しているか、ということなんです。ちょっと列挙してみましょう。

 

第一層:柱や梁の外側に「MOISS」という構造用面材が張られます。これは粘り強い耐力壁としての強度をもちながら、湿気を通すという優れものです。

 

第二層:MOISSの外側に「透湿防水シート」が張られます。これは液体の水は通さないが、水蒸気は通す、というゴアテックスのようなもの。これが外壁の最初の防水層になります。

 

第三層:透湿防水シートの上から「通気胴縁(どうぶち)」が打ち付けられます。縦に細長い木材が、455ミリの間隔で打たれて、その厚み分が「通気層」として残ります。

 

第四層:通気胴縁の上から「バラ板」と呼ばれる板が横向きやナナメ向きに張られていきます。これは外壁モルタルの下地、その上にくるラス紙やラスの下地になる板ですね。

 

第五層:バラ板の上に「ラス紙」あるいは「フェルト紙」と呼ばれる黒い紙が張られます。これがこの写真にある紙。防水機能をもつ紙です。透湿防水シートに続いて、ふたつめの防水層になります。

 

第六層:フェルト紙の上に「ラス」と呼ばれる金網を打ち付けます。これはその上に塗りつけるモルタルの付着をよくするためのもの。これがないとモルタルはポロポロ剥がれてしまいますから。

 

第七層:ラスの上に「下地モルタル」を塗りつけていきます。これは左官屋さんの腕の見せどころですね。乾き具合など確認しながら、塗っていきます。

 

第八層:ここでようやく仕上げ。吹き付け工事の場合もあるし、左官職がそのまま上塗り仕上げ材をコテで塗りつけていく場合もあります。

 

ということで、冒頭の写真は第五層のフェルト紙と、第六層のラスが見えているところでした。あと2つの層をつくって、ようやく全部で八層の外壁が仕上がる。なかなか大変。

 

「通気外壁」というのは事ほど左様に手間のかかるもので、しかしその手間の分だけの価値があるものです。それは建物を「呼吸」させるという機能に大きく貢献し、家を長持ちさせてくれるんですよ。

 

かたや、とても美しく見えているこの軒裏は、垂木という骨組みに板を打ち付けているだけ。一層だけの仕上がりです。屋根の上も外、下も外で、そうした「呼吸」などに気を使わなくてよいからだと言えます。

 

現場でこの光景を見て、その見た目のイメージとは裏腹に、とても手間の掛かった、しかもまだ出来上がっていない外壁と、あっという間に美しく仕上がった軒裏との対比がとても面白く感じられた、というわけなのでした。

 

私はいつもお客さまにご説明するのですが、家とは、出来上がったら見えなくなるところにこそ手間暇をかけるべきもの。それは、その手間暇にこそ、家を永く生かし続ける秘密があるから、なんですね。


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