危険と視線

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〈平屋でない限り、家には必ず「穴」がある。その廻りのつくりにも多くの検討事項があります。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

先週末から月曜日にかけて、請負契約と実施設計打合せが続きました。木の家のあちこちの仕様を決めていくにあたって、必ず登場するのが「手摺」の話です。これが結構深いので、今日はそのことを。

 

冒頭の写真は、先日お引渡しをした木の家「E-BOX」の階段廻りを撮った一枚。階段は「穴」ですから、落ちたら危ない。その周りに落下防止の手摺を必要としますね。でも、その手摺をどうつくるかは、色々。

 

まずは、この写真のように「スカスカ」にするか「塞ぐか」という大きな選択肢があります。KJWORKSの標準的な仕様がこれ、スカスカの「縦格子」手摺ですが、塞ぐ場合はこれを手摺とは別に「腰壁」と呼んだりもします。

 

縦格子と腰壁がどう違うかというと、それは「視線の抜け」です。このスカスカ縦格子の手摺を、写真の向こう側に写っている部屋から見返した場合、階段室の穴まで含めた空間が目に入りますね。

 

でも、腰壁の場合はその壁の手前までしか空間として見えてきません。そう、「穴」の廻りの手摺のスカスカ加減は、空間を広く見せたり、狭く見せたり、その認識の違いを生むんです。

 

では次に、この手摺がスカスカだとして、それが「縦」の格子か、「横」の格子か、ということは、どういう違いを人に感じさせるでしょうか。向こうの部屋からの視線としては、あまり変わらないようですが。

 

しかし、これが大きく違う。ひとつには、落下防止の手摺というものを必要とする階段、あるいは吹抜けのような「穴」に関しては、人の視線は下から上へ、上から下へと縦に動くということがポイント。そうした時、縦の格子のほうが、動く視線の邪魔をしません。

 

対して横方向の手摺は、例えば吹抜けを通して一階から二階を見た場合、逆に格子の下面ばかりが見えて、むしろ「抜け」がなくなってしまう。水平方向と上下に動く視線を両方考えると、縦格子のほうが理にかなっていると言えるでしょう。

 

そしてもうひとつ横格子をお薦めしない理由があります。それは、「ハシゴ」になり得るから。小さいお子さんが、格子をハシゴのようにして登ってしまったら、とても危なく、なんのための手摺かわかりませんね。

 

もちろん、縦格子が全てだと言うつもりはありません。しかし、基本的に落下防止という機能を担うべき手摺に、それを満足しつつ空間をより広く感じさせる意味合いをもたせるなら、縦格子が基本と考えて問題ないでしょう。

 

ちなみにKJWORKSでは、この縦格子の間隔を、小さいお子さんの頭が通らない、ということを基準に考えています。頭が通らない範囲で、なるべく開放的に。お子さんがここに両脚を入れてブラブラさせ、下の階にいるお父さんお母さんと話をしている、なんて光景はとても微笑ましく、是非そう使ってほしいですから。

 

また、上記とは全く別に、格子にしない手摺も色々あります。その場合には単なる壁でなく、手摺の高さの引戸を仕込んだり、あるいは手摺の奥行を利用してCDの棚にしたり、これまた色んな方法があります。

 

吹抜け廻りで落下防止のために取付ける手摺ひとつにも、色んな「そうなる理由」があるし、それも家によってまた違っています。手摺に限らず、注文住宅はそこが面白いんですね。

 

ちなみに上記のようなことは、私たちの言い方で言う「木視率(もくしりつ):空間に木が見えている割合」にも関わる。どの木の家でも、そういったことを全てふまえて手摺のあり方を話し合い、決めているんですよ。

 

今日はなんだか講義のようになりましたが、こうして様々なことを詰めて家が出来ていく、そうした面白みがお読みの皆さんに伝わったなら、私としては幸いです。


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