せなかの家具

2016-04-12

〈若葉家具さんのつくる、少し建築へふみだした感じの家具を愉しんでいました。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日も、昨日お伺いした広島県府中市の家具メーカー「若葉家具」さんのお志事から、是非皆さんにご覧いただきたいものをご紹介しましょう。「府中家具」の伝統を受け継ぐハコモノの技術を活かした、冒頭の写真のモノです。

 

これ、『間合(マアイ)』というシリーズの家具を組み合せたものです。ちょっと若葉さんのHPから引用してみましょう。「間合とは、物理的な空間の隔たりや、時間やリズムの合間を示します。この家具も生活に「間」をつくり「間」を合わせる道具になる事を願って考えました。」

 

ソファ、シェルフ、カウンターデスクというラインナップのこの「間合」、その3つを組み合せると、こうなる。どれも高さが90センチで統一されているんですね。中でも私がとても面白いと思うのは、このソファ。

 

ソファで、背もたれが高さ90センチというのはあまりありません。それも、もたれるものではない仕様の、真っ直ぐな、まるで「囲い」のようなものは。しかし、これをシェルフと組み合せた写真の状態で座ると、なんとも言えない「安心感」のようなものがあるんです。

 

まるで、壁を背にして、部屋の中に自分だけの空間ができたような、そんな感じ。これは家具にして家具にあらず、というか、間仕切り壁に近いような、そんな印象を人に与えてくれるソファだと思いました。

 

KJWORKSでも、例えば子供部屋を間仕切りする時に、壁ではなく造付けの本棚で仕切る、というようなことをよくやっています。壁の厚み分の空間を無駄にせず、それを収納として活用できるという利点がありますね。

 

それはしかし、家具=本当の間仕切り壁という状態です。この「間合」ソファはそれとはまた仕切りの程度が違って、部屋をつくるのではないけれど、その空間の中に「コーナー」をつくる、そんな感覚でしょう。

 

ソファに座っていれば、自分だけの小さな空間。そこから立ち上がれば、家族と一緒の広い空間。家具によって、その2つの空間認識がうまく共存できる。これはなかなか面白い仕掛けですね。

 

私は空間をつくる志事をしていますが、いつも思うのは、ただ体育館のようなだだっ広い部屋をつくればいいってもんじゃない、ということです。広くても「居場所のない」家というものもある。広さをつくるのではなくて、人の心地良い居場所をつくることが大事なんだ、と。

 

その居場所をつくるにあたって私が意識するのは、私の言葉で言うと「背中をつくる」ことです。背後に壁や腰壁があり、そして前が開けている。そんな場所で人は、安心して開ける「前」を楽しめるのだと思うんです。

 

「前と後ろ」ではなくて、「前と背中」。若葉家具さんの「間合」シリーズは、広い部屋の中に、自由に動かすことのできる「背中」をつくることが出来るという意味で、非常に面白い。これは建築には出来ない、家具ならではの新しい醍醐味ではないでしょうか。

 

家具から建築へと一歩ふみだしたような、空間の中に背中をつくるソファ。使い方にもそれ相応の知恵がいるだろうとは思いますが、何か今までにない可能性を感じます。そういう時間はとても愉しいですね。

 

この心地良く「家具に囲われた」コーナーで思わずほっこりしながら、この感覚をどう自分の空間づくりに落としこもうか、それを想い浮かべていた私でした。


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