凄味の金字塔

2016-05-12

〈その作品に、本の表紙として馴染んできた絵師の作品展に行きました。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

昨日は、午後からの晴れ間に木の家の現場へ行きましたが、朝からは少しお休みをいただいて、明石市へ行っていました。明石市立文化博物館で開催中の『生賴範義(おうらいのりよし)展』を観るためです。

 

生賴範義さんと言えば、私の世代ですと、やはり「スター・ウォーズ」のポスターが印象的です。若い方には『信長の野望』の絵と言えば伝わるでしょうか。名を知らない方も、きっと絵はご存知のはず。間違いなく日本が世界に誇れる、素晴らしい画業を遺した絵師だと思います。

 

昨年、ご逝去されたというニュースを知り、私は自分の中で何か大切なものが喪われたような気がしたものです。それほどまでに、その作品群に多く接し、常々大いに感服していましたから。

 

今日の冒頭の写真は、その私が慣れ親しんだ生賴さんの画業でつくられた、「生賴タワー」。そう、その画業とは、書籍の装丁画です。このタワーは700点近い数の書籍やレコードを並べて出来ているそうですよ。

 

私がかつて青春時代に読んだもの、例えば小松左京の作品群、そして平井和正のウルフガイシリーズ、アダルトウルフガイシリーズなどの装丁は、もう生賴イラストの独壇場でした。幻魔大戦などもそうでしたね。

 

さらに遡れば、少年時代に読んだ「少年少女講談社文庫」とか、「科学のなぞ・不思議」といったような本にも、今から思えば生賴さんのイラストが使われていたんだなあ、なんて、今回の作品展から改めて思ったりしたことでした。

 

そして今回は、この「生賴タワー」と、そして一部の展示が撮影可能となっていたんです。イラストを学ぼうとする方々への配慮でしょうか。なかなかの嬉しい心遣いです。こんな感じの展示でした。

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これらは『SFアドベンチャー』という雑誌の表紙に使われた絵のシリーズ。「神話時代から現代までの、魔女的な存在の女性」というテーマの連作で、約8年間続いたといいます。このように完成図とラフスケッチとが併せて展示されていてその制作過程が見え、とても興味深い。

 

スター・ウォーズやゴジラのポスター、そして書籍の装丁画における生賴さんの志事はある程度知っていましたが、このSFアドベンチャー表紙のシリーズは全くはじめて。魔性の女性と宇宙的な風景、そして時代を異にする兵器や宇宙船などが一体となった、なんとも不思議な美しさの絵画でした。

 

例えばこれは「ユーディット」と題された作品。映り込みはご容赦を。

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私はユーディットと聞くと、グスタフ・クリムトの同名の作品を想起します。聖書に出てくる、敵の将軍の首を切り落とした美女、ユーディット。同じ女性をテーマにしながら、クリムト作と生賴作、その違いをまた味わっていたんです。

 

また、このようなカラフルなポスターや表紙絵だけでなく、ペンによる点描を駆使したモノクロームの絵も、とんでもない迫力。いやはや全く、すさまじいまでの出来栄えです。例えばこれ。

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この原田芳雄だけの原画が展示されていたのですが、絵の前で私、思わず震えました。この凄味。その筆の冴え。生賴さんの絵にはすべて、画題に関わらずそうした「凄味」があって、そのエネルギーが観ているものを圧倒する。こんな画家はそうそういません。

 

「生賴タワー」の説明書きにありましたが、生賴作品は2500点ほどもあるそうです。タワーはその「ほんの一部」だと。まさに、溢れる凄味を描き出し、それを重ね重ねてできた、素晴らしい金字塔ではありませんか。

 

絵から迸る迫力に、観終えたら少し疲れを覚えるほど。でも、氏を偲びつつその金字塔の片鱗を見られただけでも、大いに満足できる時間でした。


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