まんなか色々

2016-05-27

『100%  Real  Kitchen 』   鈴木尚子 責任編集   株式会社KADOKAWA

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

先日もここに書いた気がしますが、私は何人ものライフオーガナイザーさん達と親交があります。「収納の巣」の宇野さん、Drawer Styleの中村さん、パーソナルスタイリストのシェリーさん。そしてお三方からご紹介をいただいた方、他にもたくさんの方々。

 

ライフオーガナイズというものを知って、その面白さをKJWORKSの設計スタッフにも伝えたくて、宇野さんにレクチャーをしてもらったりもしましたね。そしてそこから資格をとったスタッフもいるほど、これは私のような「暮らしを実現する」志事には、とても面白いものの考え方です。

 

本書は、私は面識はないのですが、そんなライフオーガナイザーのお一人、鈴木尚子さんの編集。「キッチン」をテーマに、同じくライフオーガナイザーの皆さん方がどのようにキッチンでの暮らしを工夫しておられるか、その実例を紹介し、知恵をシェアしようという試みです。

 

これも先日書いたことですが、ライフオーガナイズは単なる収納術ではなく、「あなたにとっての心地いい暮らし方」を見つけるやり方、だと思います。そして、本書のプロローグにこんな文章がありました。

”暮らしの真ん中にあるキッチンは、そこで暮らす人の「ライフスタイル」の象徴だと感じます。”

 

これ、家づくりの志事をしていると、本当によくわかります。まさに「食」を司るキッチンは、暮らしの真ん中。私の設計のスタンスも「キッチンが特等席」というものですし、私がが下手ながら料理を嗜むのも、それを自分自身の感覚として設計図に落とし込みたいから、なんですね。

 

そして私が思うに、よいキッチンとは、「作業」と「収納」とのバランスがとれているもの、だと思います。バランスというのは、「量」という意味でも、「距離」という意味でも。各ご家庭によって、その程よいバランスが違っている。それを見つけるのが即ちキッチンの設計だと言えるでしょう。

 

本書は3部構成になっています。第1部は、7つのライフオーガナイザーさん宅のキッチン実例紹介。どれも素敵なキッチンですね。それぞれのケースに10ページが割かれ、写真も豊富に掲載されています。引出の中の写真もいっぱい(笑)。

 

そしてライフオーガナイザーさんの編集らしく、「収納のルール」がそれぞれに3つ、「MY  STYLE」と称した住まい手の声も載っています。さらに「◯◯さんちの朝ごはん」のページもあって、単なるハードだけの内容ではないあたりが楽しいですね。

 

第2部は「キッチン特別講座」。これもオーガナイズ、リフォーム、お掃除と3つの誌上セミナーが展開されていました。そして第3部はいわゆるTips、ちょっとした工夫のポイントを載せたコーナーですが、読んでみて「これが一番主婦(あるいは主夫)の皆さんに役立つかも!?」と思いました。

 

全国のライフオーガナイザーさん方が、自分が実践しているアイデア、工夫を投稿する、というかたちになっているんです。これが実に面白い。主婦であり、なおかつオーガナイズを実践されている方々の発言に写真も沿えられて非常にわかりやすい。いや、読んでて愉しいなあ(笑)。

 

そう、この本はもちろん一般向け書籍ですが、私たちものづくりのプロにも、とても参考になる情報だと思うのです。建築業界の方ではないアマチュアの、でもライフオーガナイズのプロで、「暮らしの最適化」という面で同じベクトルをもっている方々の、生の声ですから。

 

それは「私の心地よさ」を目指した、色々な「暮らしの真ん中」のあり方。実際これほど有用な情報ってちょっと他にないのでは、と感じる程です。私たち建築のプロは、こうした住まい手の声に、実際につくられる家で、家具で、応えていかねばなりません。

 

設計者諸君、カッチョいい建築家の作品集なんぞ見てる場合とちゃうよ、こういう本から「かたち」を見つけていかな。そう言いたくなるほどに、本書は中途半端なプロへの批判という側面も併せもつ、貴重な参考書だと思いました。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です