喪うその前に

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〈港神戸の近代建築が喪われるその前の見学会に参加して、思うところがありました。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日も、昨日に引き続いてまたJR神戸駅へ降り立ちました。昨日は六甲山の木のミーティングでしたが、今日は神戸に残る近代建築の姿を目に焼き付けるためです。

 

これがその建物。神戸の皆さんには「ファミリアホール」として知られている、「旧三菱銀行神戸支店」です。

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この銀行建築は1900年の竣工。築116年ということですね。設計者は曽禰達蔵、施工者は竹中工務店。石と煉瓦を使った「組積造」の建築物です。この近代建築が解体されることになったため、今日は最後の見学会がおこなわれていたんです。

 

私はこの建築の外観を見たことはありますが、内部に入ったことはありません。しかし、建築を生業とする者として、こうした歴史を刻んだ建物がなくなることは、とてもつらい。今日は時間もとれたので、じっくりと拝見してきました。

 

では、今日撮った写真で、この建物に想い出のある皆さんと、その最後の雄姿を共有したいと思います。

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色んなパーツがあるようで、どこか清潔感を感じさせる外観デザイン。

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入口を入ると、社名入りの大きなガラスがお出迎えです。

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そしてその向こうに、コリント式列柱に支えられた花崗岩の素晴らしいアーチが。

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それをくぐって入ると、天窓のある広いホールです。

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サイドにもアーチ、そして縦長の洒落た照明器具。

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中に入って入口アーチの見返し。

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これは金庫室の入口でしょうね。

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重厚な扉がとても格好良い。これもなくなるのは惜しい。

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そして私は職業柄、こうした木の造作工事、建具工事などに眼が行きます。

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彫りの深い扉廻りのディテール。巾木は人大研出しでした。

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この扉も実にいい感じ。こういうの、もう作れないと思うので、是非保存しておいてほしいです。

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上部にアーチのついた扉。金物も素敵でしたよ。

 

私は、大学の建築学科では「建築史」を専攻していました。担当教官は西洋建築史の福田晴虔先生。今は木造一本槍ですが、こうした近代の様式建築にも親しんでいたし、重厚なそういう建築も好きです。

 

この旧三菱銀行神戸支店は、ルネサンス様式とよばれるスタイルのデザインで建てられています。ギリシア風の付け柱やアーチなどを見ていると、こういう建物の実測やその図面化に明け暮れたあの頃を思い出すようでした。

 

そしてこの建築、記録を見ると、1977年にアパレルメーカーのファミリアが取得、1996年7月からは250名収容の多目的ホールとして活用していた、とのこと。2007年には経産省の「近代化産業遺産」に、2000年には神戸市の「景観形成重要建築物」に指定、とあります。

 

そうした指定まで受けた建築が、なぜ解体されるのか。維持保存は出来ないのか。どうしてもそういう想いが浮かびます。持ち主であるファミリアの本社社屋移転のため敷地ごと売却、そして跡地にタワーマンション。耐震化工事に多額の費用をかけられない、という経済原理の前に、近代化遺産がみすみす喪われていいのか、と。

 

今日、写真にもあるように、本当にたくさんの方々が見学に来られていて、あまりよく知らない私にも、皆さんの想い出の中にある大事な建築なんだ、ということがよくわかりました。それを見て、なおさらその想いを強くした次第。

 

港神戸にはこうした近代建築がたくさんあり、かなりの数が「保存」という選択肢にそって耐震化、あるいは部分保存によって遺されています。タワーマンションの一部に外壁保存される、という話もあるようですが、街並みの維持においてあまり期待はできそうにない。そう感じます。

 

建築は街の顔であり、後世に遺すべき財産である。神戸には強くあるはずのそうした意識が、この建築にももっと働くことを願ってやみません。喪う前に見ておく、ではなく、喪う前にもっと遺す手立ては打てないのか。

 

私もまた、さらに調べてみて、自分にできることがないか探ってみるつもりです。


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