線いっぽんの軌跡

2016-07-25

〈図面にいそしむ一日、ふと昔の記憶へも誘われたりしていました。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日は終日、事務所にてせっせと間取りの図面を描いていました。そしてその「描くこと」について、自分の記憶と先月の北海道から想い出すものがありましたので、今日はそのことを。

 

今、というかもう20年以上、図面というものをパソコン上で描いています。CAD(キャド)と言ったりしますが、図面を描くソフトがあるんですね。これは私だけではなく、色んな「製図」を伴う志事に共通する事情ではないかと思います。

 

でも、おそらく私の世代がぎりぎりくらいかと思うのですが、私が大学を出て設計事務所に入所した頃、まだCADは一般的ではなく、昔ながらの手描き図面でした。「ドラフター」という製図機器を使って、描いていたんです。

 

ドラフター、今の若い方はご存じないかもしれませんね。こういうものです。

ドラフター

 

立てた製図板の上を、定規が上下左右自在に動くようになっている。この写真はWEBからいただいてきましたが、本当に私が20代の頃使っていたものに近くて、思わず懐かしさでいっぱいになりました(笑)。

 

そして更に、学生時代のことも想起されます。ドラフター以前、本当に製図板に「T定規」で描いていた頃のことを。デジタルで修正が簡単なCADに比べて、あの頃のほうがずっと「製図」が真剣勝負だったなあ、なんて考えたり。

 

そしてそう思った時、先月言った旭川で見たものも脳裏に蘇ってきました。その時にも、私の学生時代の記憶へと誘ってくれる道具があったんです。それが冒頭の写真のくねくねしたモノ。

 

これ、皆さんご存知でしょうか。曲線を描くのに使う「雲形定規」といいます。私も手描き製図のころには、部分的に出てくる曲線を描くのに、この雲形定規からちょうど合う曲線を探したものでした。

 

この雲形定規が置いてあるデスクは、旭川の木の家具メーカー、カンディハウスさんの5階展望室「ヒストリールーム」にあったものです。昨年天国へ召された創業者、故・長原實さんのデスク廻りを再現展示したものなんです。正面から見るとこんな場所。

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永年使い込まれた風合いの椅子をはじめ、なんとも言えず落ち着いた雰囲気。置かれたモノ達もすべて長原さんが使っておられたもの、ゆかりの品々です。そして壁の本棚には、直筆のデザインスケッチがずらりと並んでいました。

 

木の椅子をはじめとした家具のデザイン画の数々、その達者なこと、そしてなんと味わい深いこと!もう、そのことに感動してしまって、私は正直、他のものがあまり眼に入っていなかったと思います。

 

こうしてスケッチを幾度も重ねて、そこからご自分の感覚に合う曲線、曲面を見つけられ、それを雲形定規でまた図面に起こして描いておられたんだなあ。絵を見ながら、そんな長原さんの姿を思い浮かべていたのでした。

 

私も、間取りを図面化する前には必ず手描きでラフ画を描きます。そして最近は、その絵のままでお客さまにご提出したりも。私なりの描き方が定まってきているので、むしろその方がお客さまには伝わりやすかったりしますね。

 

なんというのか、手描きの絵の方が、その一本のフリーハンドのラインの後ろに重ねてきた多くの線の跡が見えるというか、そこに至った軌跡が感じられるような気がするし、それが絵の味になるのではないでしょうか。

 

木の椅子はほとんどが曲線、木の家はほとんどが直線。その点ではだいぶ違っていますが、でも手描きのスケッチを重ねた中から「この線」というラインが決まってくるのは、きっと同じの筈ですよね。

 

私の場合、スケッチの段階でよく推敲された絵、手描きで一度描いた絵は、CAD図面に起こすのも早いです。きっとその軌跡を体が覚えているから、迷わないのでしょうね。

 

正直、CADで描くのはあまり好きではありません。でも手描きラフ画から一歩進んだ段階では、細かく寸法を入力しながら描くこの方法が向いている。とはいえ、マウスを動かし、キーボードで数字を入力しながら描くという作業は、喜々としてやる感じではなく...。

 

それもあって、今日はちょっと現実逃避気味に、こんなことを想い出していた次第。雲形定規や角度定規、今はあまり使われなくなった味わい深い道具たち、久々に触ってみたいものです。家のどこかに置いてあるかなあ?


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