循環する都市へ

2016-08-03

〈こんな木造80階建ての超高層ビルも、絵空事ではなくなっています。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

昨日、竹中大工道具館へ行ってきてから、色々と考えています。それは、同館にあるような先人達の技術を継承することと、地球の環境を維持することの両方にまたがる話。今日はそのことを書きたいと思います。

 

先月のこのニュース、皆さんの眼に留まったでしょうか。7月初頭、京都の金閣寺(鹿苑寺)敷地内から、巨大な仏塔の一部とみられる装飾品が出土しました。そしてこの出土品は、室町三代将軍である足利義満が建立した「北山大塔」の部材ではないかというのです。

 

北山大塔は、義満がその直前に建てた相国寺の七重塔が落雷で消失したため、同じ七重塔を鹿苑寺の敷地内に建てたもの、とされてきました。でも、実際にその遺構らしきものが発見されるのは初めて。これは凄い発見なんですね。

 

そして、驚くなかれ、相国寺の七重塔、そしてこの北山大塔は、共に高さが110mほどもあったというんです。現在遺っている塔で最も高いものは東寺の五重塔で、これが55mだと言えば、その古の七重塔がどれだけすごいものだったかがおわかりいただけるでしょうか。

 

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このように、現在京都駅の前にある京都タワーとそう変わらない高さの塔が、金閣寺のすぐそばに建っていた。もちろん全て木造です。これを思うと、古の先人達の建築技術の高度さがわかろうというものですね。

 

そしてもうひとつ、これも先のニュースと同じ頃、私たちの常識を覆す建築計画が、この業界に稲妻のように走りました。それが今日の冒頭の写真、イギリスで発表された「木造80階建て」の超高層ビルの計画です。

 

高さは約300m。写真は計画案の合成ですが、木造でここまでの建築物が出来るんですね。この一棟全体の木材使用量は約6万5000㎥(立方メートル)ということで、普段私たちKJWORKSがつくる家の約3000棟分になります。

 

昨日のブログにも書いたことですが、日本の木造の歴史は、残念ながら断絶に近い廃れようとなっています。しかし、足利義満の時代には既に110mの塔を建てようという技術が存在していた。これ、600年前のことなんですよ。

 

それを思えば、現代に300mのタワーを建てようという技術提案は、本当はこの日本から生まれ出るべきものだったのではないか。私はそう感じるんです。明治維新以降、西洋に追いつけ追い越せで自国の建築物の技術継承をどこかに置き忘れたツケが今この国を襲っている、と。

 

とは言え、それを今嘆いていても詮ないこと。せっかくの木造工法技術の蓄積が消えてしまう前に、もっと広くそれを波及させていくべき、今がその時だろうと思うんです。昨今はCLTという新しい高強度な技術も登場していることですし。

 

では、ここで原点に戻って、なぜ木造がいいのでしょうか?それは人の心に安らぎを与えてくれるということも非常に大きいですね。でも、こうした大規模建築で大量に使うことの意味合いとは「循環」なんです。

 

木材の素晴らしさとは何より、循環可能な資源であるということ。植えれば育ち、育つ過程で大気中の二酸化炭素を固定して大きくなる。そしてそれを製材すれば材木という建築資材になり、また伐採した森へは新たな樹を植えることができる。

 

それは人間がコントロール出来る、なおかつ人間と自然が融和して歩むことの出来る、そんな道だと言っていいでしょう。今この地球で、人類の英知の使い途として、これほどいいことは他にないのでは。私などはそう思うほどです。

 

循環をその根本にもつ仕組みは、持続可能である。それが、限られたこの地球という乗り物の中で私たちが取りうる、良き方法である。そして我々日本人にとっては、それが先人達の培ってきた文化を継承することにもつながるのですね。

 

竹中大工道具館で出会った、木造に命を捧げた棟梁たち、職人たちは、現代の我々の体たらくを嘆いているかもしれません。でも、まだ遅くない。時代はようやくその方向を見つけかけている。

 

この「木の文化」を資源の循環という大きな課題と一緒にまとめあげていくこと。私自身もそれに従事しながら、この国の大きな動きにも、さらに目を向けていきたいと思う次第です。


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