仮初めなるもの

2016-08-11

〈世界が熱中する五輪。でも一時の熱狂だけでなく、持続可能なものを目指すべきですね。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

ブラジルはリオデジャネイロでおこなわれているオリンピック、連日の選手たちの活躍に湧いていますね。時差があるので、熱中するあまり寝不足になっている方も多いのではないでしょうか。

 

私もこういう時にはテレビを観ます。でも、選手たちを応援しながらも、建築屋の私はちょっと違うところも観察しています。それは、活躍の場である競技場そのもの。「いかにして五輪施設を無駄にしないか」ということについて、リオ五輪では色々な取り組みがなされているんですよ。

 

オリンピックは4年に一度で、ともすればそのためだけに大規模な競技場建築がつくられ、その後はあまり使われず、むしろ開催都市のお荷物になるという現実がありました。例えば2004年のアテネ五輪の際に建築された施設は、その大半がもう使われていないそうですね。

 

それはとんでもない無駄遣いである、ということで、ロンドン五輪の頃からその対策が採られるようになってきました。ひとつは既存施設の利用、そしてもうひとつは競技場建築の「仮設化」です。仮設というのは要するに「一時的な建物」ということですね。

 

五輪の競技場ではあるが、祭典が終わればまた解体できる建築。そしてまた再利用できる建築。既存施設をフル活用することと併せて、そうした取り組みがリオでもおこなわれています。

 

まず、開会式場だったマラカナン・スタジアムは、本来はサッカー競技場ですよね。サッカー場が五輪開会式場になるのは初めてだそうです。サッカー大国ブラジルだからとも言えるでしょうが、メインスタジアムを新たにつくるより、ずっと環境にも優しいことです。

 

そして、今日の冒頭の写真。この建物はハンドボールの会場となる「フューチャー・アリーナ」です。夜景がなかなか格好いい。でも、これも「負の遺産」にならない建築としてつくられています。

 

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いわゆる「仮設」的な感じはしませんが、この建物は再利用を前提に設計されていて、五輪終了後は別の建物に生まれ変わります。それも、別の場所で。ジャカレパグアという地区で、4つの小学校につくり直されるのだそうですよ。

 

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これがその概念図。五輪施設としては仮設で、その後は仮設でない別の建築になる。建築材料を無駄にしないことを前提に設計する。これはとても素晴らしいことですね。

 

そして、水泳競技がおこなわれたこの施設も、同様の思想でつくられています。「オリンピック・アクアティック・スタジアム」ですね。

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このスタジアムも、五輪終了後はもっと規模の小さい2つの水泳場としてつくり直されるのだと言います。水泳競技場というのは非常に特殊な建築物ですから、それを別の建物につくり直すという設計はかなり困難だったのではないかと想像します。

 

他にも、いわゆるIBC、国際放送センターの建物は学生たちが使う寮の建物として再利用されるとのこと。IBCは世界各国のテレビ局の特設スタジオがつくられたりする建造物ですから、まさに仮設的。建物本体はがらんどうだと思いますので、再利用はしやすそうですね。

 

また、今回の五輪は面積約120ヘクタールの「バハ・オリンピック・パーク」という三角形の半島部分に9つの競技場が集中しています。そこに前述の仮設建築もあるんです。

 

五輪終了後は、そうした仮設建築は本来の用途のために解体撤去されます。そしてその跡地は、一部が公園となり、残りの部分は民間企業による開発がもう決まっているとのこと。

 

既存利用も建設費を無駄なく使うことも、ブラジルという国の今の状況を思えば、その点でも納得がいくものです。しかしそういう視点でなく、持続可能性という地球環境における大きな見方でも、非常に規模の大きい五輪という祭典だけに、なおさらその意義は大きいですね。

 

このような移転、改造、用途変更などを可能にする今回の五輪施設を、リオ市長は「遊牧民のような建築」と呼んだそうです。ノマドですね。それも上手い言い方ですが、私は大和言葉の「かりそめ」という言葉を思い浮かべました。

 

4年に一度のオリンピック。その「祭」そのものが「仮初め」だとも言えるでしょう。ほんの一時、晴れの舞台として忽然と現れるもの。そしてそこに生まれる建築物たちも仮初めの役目をもち、祭りのあとにこそ本来の自分に生まれ変わる。

 

五輪とは国の威信を競うものではない。この21世紀、ようやくオリンピックの意味合いに相応しい建築のあり方へと戻ってきたような、そんな気がしている私です。

 

※明日12日から16日までは、ブログもお盆休みをいただきます。どうぞよろしくお願いいたします。


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