図面から読みとれるもの

2016-09-03

〈ビジュアルによるコミュニケーションの楽しさと難しさを考える日でした。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日は一日、お客さまにご提案するラフプランをつくっていました。まとまってお客さまにメールでお送りし、ほっと一息。実はもう何度もやりとりをしているので、お渡ししてご説明しなくても大丈夫。

 

このお客さまと私のやり取り、しばらく前からお互いの手描きの間取りでコミュニケーションをとっています。「図面を読む」ことが出来て、かつ自分でもそれをつくるのが好き、という方なんですね。

 

私はプロですから図面が読めるのは当然ですが、お客さまの中にも、図面を読むことが上手な方がおられます。そういう時はこちらもそれに合わせて、ラフプランの段階でも手描きの図面でやり取りを。

 

言葉では伝えきれない部分が絵だと一発でわかったりして、とても便利な面もあります。しかし反面、素人であるお客さまは構造のルールや細かい納まりなどはご理解が難しいので、それがネックになることも。

 

そのあたりは、プロである私が上手にエスコートしてさし上げる部分。私は実際に建てることが出来るものを描いていて、お客さまはその一歩手前のものを描いている、とも言えるでしょう。そしてそれが、図面であるか、そうでないか、の違いだと思います。

 

私はいつも、あたり前のように図面という情報伝達の手段を用いてお客さまにご提案をしていますが、考えてみればこの、「3次元を2次元に投影する」という図面の情報保存法は、かなり特殊なものですよね。

 

今回、手描きの間取り図をやりとりするのは楽しいですが、でもそれがあたり前になると、私の方からの情報伝達がおろそかになりかねない、そう思いました。やはり絵だけでない、言葉のアシストもしっかり添えないと、と。

 

なので、今日お送りしたメールには説明書きをびっしり添えました。そうして言葉で伝わるものと、絵から3次元に立ち上がってくるもの。その両方によるコミュニケーションこそ、お客さまを安心させ得る。そう再認識した次第です。

 

さて、今日の冒頭の写真は、最近見て大いに感心したある図面です。図面だけでなく、右側に数量の表も付いていますね。これは、竹中大工道具館に展示されていた、宮大工・西岡常一棟梁の描かれたものです。

 

西岡棟梁がずっと手掛けておられた、薬師寺の造営工事。上のノートには西塔が、そして下のノートには三蔵院の回廊部分が描かれていて、左側にその図面、そして右側は材料の拾い出し表でしょう。

 

この三蔵院回廊の拾い出し表を見ていると、細かな寸法と樹種、そして材積(使用する木材の体積)が書かれています。それに加えて「木取り」、すなわちその材をどのように採るかという情報までも。

 

そしてさらに、この全体の造営工事の中での「転用」、つまり材料の使い回しについても数量が事細かに書かれているんです。伊勢神宮の例を引くまでもなく、日本の伝統木造はこうして木を大事に使ってきたんですね。

 

私はこの棟梁のノートを見て感動し、ちょっと体が震えました。その図面の美しさと、その恐ろしいまでの豊かな情報量に。そしてそこからビンビン伝わる、西岡棟梁の執念と言ってもよいほどの、強い想いに。

 

そう、文章と同様に、図面というものにもやはり想いは宿る。プロの技術をもって一所懸命に練り上げ、それを「わかりやすく」伝えるべくまとめ上げた絵には、やはりその上に載っかっている、眼に見えないものがあると想います。

 

そう想い直してみれば、やはり今回のお客さまと私との手描きの絵のやりとりも、そこにお互いの想いが載っかっているからこそ、その絵によるコミュニケーションが楽しいんだなあ。そんなことを感じました。

 

引き続き、その楽しさを損なうことのないように、プロとしてのフォローやアシストをきっちりこなしていくことで、きっと双方が満足できるよいプランに着地できるはず。それはきっと「納得の家づくり」のこの上ない最初の一歩になることでしょう。


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