見込みの変換

2016-09-09

〈家づくりの中で見落とされがちな隠れた空間を、上手く活用する術もあるんです。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

私の事務所「木の空間」へお越しになった方は、壁一面が造付けの本棚になっているのをご存知だと思います。本棚というか、オープン棚ですね。その一部が本棚として使われており、残りはファイル棚や飾り棚になっています。

 

そして最近ちょっと困っているのが、その本棚。ついに本が入りきらなくなってきたんです。ここで書評ブログも書いていますが、そのペースの3倍くらいは読んでいますから、もうかなりキツい。

 

この事務所の本棚は、造付けの利点を活かして、一部が文庫や新書にちょうどいい浅い棚になっています。で、電車通勤で読むのは文庫が多く、その部分ばかり増えるという次第。

 

どうでしょう、もしや皆さんも、文庫本の収納場所にお困りではありませんか?

 

でも、私の事務所は鉄筋コンクリートのテナントビルですからそうもいきませんが、木造住宅の場合、こういう奥行の浅い本棚は、実はつくろうと思えばいくらでも増やせるんです。

 

今日の冒頭の写真がその良い事例。おわかりいただけるでしょうか、これは壁の厚みをつかって、壁に埋め込まれたようにつくった本棚です。必要な奥行に合わせて設計上の工夫は必要ですが、これなら部屋が狭くなりませんね。

 

家の間仕切り壁の中には柱が隠れていることが多いですから、少なくともその柱の寸法分は、壁の中に見えない空間が潜んでいることになります。それは家全体で考えれば、結構な分量。

 

こうした「浅い収納棚」は、その見えなかった空間を使えるようにする工夫だと言えるでしょう。空間の無駄を省き、有効活用する。なかなか良いアイデアではないでしょうか。

 

そして、こうした浅い棚というのも、実は色々と用途があるんです。文庫本もそうですし、CDもそう。トイレなら奥行11センチで巻紙が入りますし、洗面所で使う化粧品や小物たちにもピッタリだったり。

 

ちなみに建築の業界では、部材の正面に見える寸法のことを「見付(みつけ)」と呼び、側面方向の寸法のことを「見込(みこみ)」と言います。その「見込」がここでは、「厚み」から「奥行」へと変換されている、とも言えるでしょう。

 

また、同じく壁の厚みを奥行に変換して、その「窪み」を小粋な飾り棚にすることを、「ニッチ」と言ったりしますね。これもなかなかいいもので、KJWORKSでは飾り棚だけでなく、インターフォンや給湯リモコンなどの「壁からの出っ張り」をなくす術としてもよく使います。

 

家の中の実はあちこちにある、見えない空間たち。それらはこうして上手く変換することによって、有効活用が出来ます。普通に壁をつくって前に置き家具を置くのと比べれば、ずいぶんな空間の節約ですよね。

 

「浅い棚」であるが故の使い途も実は色々あるし、発想を転換してその浅さを活かす方法を考えるというのも、また楽しいもの。

 

私の事務所ももう少し浅い棚をつくっておくべきだったかと考えつつ、お客さまへのご提案としてまだ大いに可能性を感じるし、常にそうした頭の切り替えが出来る自分でありたいと思うのです。

 

 

※ なお、「見込み」は普通、「予想」という意味で使われます。建築用語の「見込み」と、あるいは茶道の用語の「見込み」とも、何か関連があるようにも思いますが、私は寡聞にして知りません。ご存知の方あれば、是非ご教示のほどを。


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