切れ味とつきあう

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〈岐阜県関市は刃物の街。出来たばかりのこんなミュージアムにも立ち寄りました。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

岐阜での面白体験、もうひとつ書かせてください。岐阜県関市の杉山製作所さんはアイアンなど鉄製品をつくる会社ですが、この関というところは、同じ鉄でも実は「刃物」の街。その関連の新しい施設を覗いてきましたので。

 

冒頭の写真でもうおわかりかと思いますが、ここは安全剃刀で有名なフェザーの企業ミュージアムです。フェザーも関市の企業なんですね。外観はこんなシャープなもの。昨日のモザイクタイルミュージアムとは対極のイメージ。

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フェザー安全剃刀株式会社は、安全剃刀だけをつくっているのではありません。とにかく色んな種類の「刃物」をつくっています。その代表的なものがエントランスに飾られていて、それが冒頭の写真。この刃物たちのサイズ、人間よりもだいぶ大きいんですよ。

 

手前は男性用の安全剃刀、それも昔のタイプかな?左奥はこれもちょっとレトロな感じ、理容師さんがつかう剃刀でしょう。では右奥のものは何でしょうか?かなり尖って鋭利な、触ると危なそうな刃物。

 

これは医療用のメスです。フェザーは国内のメスのシェア1位だそうで、メスを「替刃方式」にしたのも同社だそうです。私は「ブラックジャック」という漫画でしかメスを知りませんので、替刃なんて想像も出来ませんでしたが、なるほどなあ。

 

こんな感じで、1階はフェザーという会社の歴史と製品の移り変わりを展示していて、なるほど企業ミュージアムだな、という感じでした。しかし2階は、もっと面白いミュージアムになっていたんです。

 

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ちょっと見にくいかもわかりませんが、ここでは自社製品に限らず「切る」というテーマを掘り下げた展示が並んでいました。世界各国の刃物や、その切れる仕組み、刃物のつくられ方など、など。

 

日本刀はもちろんのこと、鋏や爪切りなどの日用品から、医療用の非常に精細なもの、調理用のもの、そして大工道具なども含め、色んな「切る道具」が集められていて、いや、見ていて飽きません。

 

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そしてこんな風に、フェザーが企業として収集した歴史ある刃物とその関連物の収蔵品も展示されていたんです。写真はほんの一部で、長い長い展示棚に歴史的遺産がたくさん並んでいました。

 

私自身はフェザーの安全剃刀は使ったことがなくて、カミソリ負けしますので、ずっと電気剃刀です。でも、フェザー社の男性スタッフは家での髭剃り厳禁らしく、全員が会社で製品実験として安全剃刀で髭を剃るのだそうですよ。

 

へええ面白い、と感心しつつ展示内容を見ていて、ふと思いました。そう言えば刃物を刃物らしく、というか、刃をむき出しにして使うことって、日常生活の中で徐々に減っていっているなあ、と。

 

私は、上手ではありませんが、肥後守(これも若い人は知らないか)で鉛筆を削ることが出来ます。子供の頃そうしていたからですが、今、子どもたちにそれを教える大人はいないでしょう。

 

昨今は爪切りにもカバーがついているし、調理の面でもピーラーなどの補助道具がずいぶんあります。先日、キャベツを千切りにするピーラーというのを知って、びっくりしたくらい。

 

どんどんと「危ない」刃というものが姿を消している安全志向の現代で、しかし、こうした刃物の姿に人は(特に男性は)いまだ心を動かされるように感じますが、それは何故なのか。

 

さては、太古の昔に「己の身を守ってくれた」モノとしての記憶がDNAに刻まれているのか?なんて、そんなことを考えながら、私もやっぱり刃物を見るのは楽しいですね。美しいと感じますし。

 

むき出しの刃物が屋外でたくさん使われるような、そんな世情に戻ることは望みませんが、あまり安全安全と言いすぎてその存在を隠していくことも逆に危険ではないか、とも思ったり。

 

刃物は危険なものと知って、その危険とつきあうことを教えるのも大人のつとめ。滅多に見ることのない様々な刃物が一堂に会した場所であればこそ、普段は「あたり前」に埋もれているそんな思考が浮かび上がる。

 

うん、そういう自分の頭の中を感じるのもまた、面白いものですね。


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