構築の営みから

2016-09-19

〈今回の東京出張では、建築・土木関連の学びがいくつもあったんです。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

先日の東京出張から、もう一回分書かせていただきます。絵画の「鈴木其一展」以外にも少ない時間を活用していくつか見て回ったのですが、今回はそれらが偶然アート以外のものだったので、まとめて。

 

まずは冒頭の写真、この通路と階段の模型のようなもの、何でしょう?パッと見て、さぞやつくるのに苦労しただろうと感じる大きなモノ、これは実は、「渋谷駅構内」を表した模型なのだそうです。

 

地上5階、地下3階に渡る複雑な駅の内部を「人間の動線」という眼で可視化したこの圧巻の模型は、六本木で鈴木其一展示の後に立ち寄った「21_21 DESIGN SIGHT」でやっていた企画展示「土木展」にあったもの。展示する建物はこんな感じ。

2016-09-19-2

 

これは、監修に私が共感する建築家、内藤廣氏が入っていたので、見に行きました。氏は東大の土木で教えておられ(現在は名誉教授)、全国各地で駅舎など土木関連施設を設計しておられます。

 

渋谷駅構内の模型の後ろに飾ってあるパネルは、日本の土木史を飾る名建築というか、名構築物です。主にダム・水利関係のものが多かったですね。土木を身近に感じるというのは、特にその業界以外の方には難しいことですので、その点で面白い展示でしたね。

 

次に、今度は日本武道館の近くにある、国立近代美術館の工芸館へ。ここでちょうど始まった「革新の工芸」展を見に行ったのですが、実はこの工芸館の建物は以前から一度見ておきたかったんです。なにせ重要文化財ですから。

2016-09-19-3

 

これです。この組積造の風格、素晴らしいですね。この建物は元々はこうした美術館建築ではなかったようで、そのことを表す看板も、屋外アートの側にありました。「旧近衛師団司令部庁舎」、明治末期の建築ですね。

2016-09-19-4

 

工芸の展示もなかなか良くて、北大路魯山人の俎板皿と再会したりしました。良い展示を味わいながら、なおかつその展示をしている古き佳き建築のなかを語るように歩きまわるのは、建築屋としては至福の時と言えるでしょう。

 

そして最後、帰阪前に駆け足で立ち寄ったのが、京橋にあるLIXILギャラリーです。工芸館に置いてあったチラシが教えてくれたのは、私が大阪の方のLIXILギャラリーで見に行けなかったもの、「水屋・水塚 ~水防の知恵と住まい~」展だったんです。これは行かねば。

 

2016-09-19-5

 

水屋(みずや)とはこの場合、台所の食器棚のことではありません。日本の民家のつくられ方のひとつ、河川の氾濫による水害に備えて、敷地内でひときわ高い場所をつくって建てられた、防水害小屋のことなんですね。

 

治水というのは古来、日本の為政者の非常に重要な課題でした。しかしそれは常に成功したとは言えず、度々民衆を苦しめてきたんですね。そこで人々が自衛の手段としてつくったのが、水屋や水塚と呼ばれるものでした。

 

昨今、ゲリラ豪雨や台風による水害のニュースが多くて胸が痛みますが、この展示は、大昔から日本人が河川と闘ってきた歴史を思い起こさせました。そこにあった「高さへの希求」という一文が強く響いてくるのを感じた次第。

 

限られた時間の中で、自分なりのアンテナと方向感覚を駆使して廻ったこれらの展示、いざ終わってみると今回はこのような「構築という営為」の凄さ、尊さを教えてくれるようなものばかりとなりました。

 

建築という世界で志事をする私にとって、どれも同じくつくる人間の営み、そしてそれを使う人間の営みを共に感じさせるもの。自然に抗う行為であるかもしれないそれらは、しかしやはり人間という生き物の存在の証しなのだろう。

 

そんな想いを何度も反芻しつつ、疲れた眼をこすりながら帰阪の途についた今回の旅でありました。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です