煮炊きと住み方

2016-09-20

〈古くてカッコいいもの、新しくカッコいいもの、つくりたいものから、一段深い認識に至りました。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日は台風の通過で、関西も大変な風雨でしたね。皆さまの生活が無事でありますようにお祈りいたします。そして私はと言えば、そんななか終日黙々と図面作成と手直しの時間でした。

 

お客さまと間取りの意見をやりとりし、そんな中でキッチンのあり方がポイントになってきたのですが、どうも上手く納まらない。うんうん唸りつつ絵にしていて、ふと先日の出先で見たものを思い出したんです。

 

それが、ひとつは冒頭の写真。先日のモザイクタイルミュージアムにあった、昔懐かしいモザイクタイル張りの「おくどさん(竈)」ですね。どうでしょう、このレトロでモダンな佇まい。

 

KJWORKSでも、古民家再生リフォームをよくやっています。そんな古いお宅の中に、あるいは建替える前のお宅の中に、私も何度かこういう素敵なタイル張りの竈を見たことがあって、その度に先人のセンスに感心したものです。

 

いわゆる「ガスコンロ(焜炉)」が日本で出始めたのは1920年代といいますから、今から100年前には、煮炊きをする道具といえばこうしたおくどさんしかなかったんですよね。そして実際には、七輪などと同様、戦後もっと後々まで使われていたはず。

 

しかし徐々に時代が流れ、薪から木炭、ガス、電気へと、その熱源となる方式の変化に伴って、こうした「炊事機器」もまたその姿を替えてきました。おくどさん、七輪、焜炉。そして今はIHや電子レンジも。

 

そしてそれが、「炊事場」そのものの姿をも変革させていく。炊事場から「台所」となり、そして今は「キッチン」と呼ばれる時代。えらい変わりようやなあ、と思いつつおくどさんの写真を見ていましたが、そのうちもっと大きなことに思い至りました。

 

ちょっと考えてみてください。もし仮に、現代においても煮炊きの道具がおくどさんや七輪しかなかったとします。そうした時、たとえば「集合住宅」と呼ばれる居住形式は、果たして成り立つでしょうか。

 

おそらくかなり難しいであろうことが、皆さんにもご想像いただけるかと思います。煙の処理が大変でしょうから。ということは、団地やマンションというものは、ガスコンロが発明されなければ、もしかしたら今も存在していない!?

 

なるほど、こうした炊事の事情というのは炊事場だけの話ではなく、人間がどのように住むか、その居住形態にまで波及する、非常に大きなファクターなのだ、ということがよくわかりますね。

 

そこで、私がもうひとつ思い浮かべたのが、先日「無垢の鉄の椅子」を見てきた杉山製作所さんにあった、素敵な「鉄のキッチン」です。

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いや、なんとも洒落ているではありませんか。私たちKJWORKSも造付け家具としてキッチンをつくりますが、現代のキッチンはどんな居住形態にも追随し、なおかつこのようにキッチンそのものを遂に「インテリア」へと進化させているんですね。

 

私もそれをあたり前のように感じて、そして今日もそれを前提にお客さまのプランを色々と検討していました。しかし、考えてみればそれはそもそも、「おくどさんからガスコンロへ」という、熱源機器の主役交代に端を発する話、なんだ。

 

タイル張りのおくどさんだけを見ていても感じなかったこと、カッコいい鉄のキッチンだけを見ていても感じなかったこと。それが、今日キッチンのプランに悩みながら写真を見返したことで、何か「一気通貫」のように私の認識を貫くのを感じた次第。

 

家づくりのプロと言っても、私もそうした「変化の意味合い」までに思いを致しつつ志事が出来ていることは少ない。そのことに反省しつつ、でもそうした歴史的経緯を実感として得たのは嬉しいことですね。

 

やはり、古いもの新しいもの、どちらにも目配りをして学びに貪欲でなければ、ものごとの深いところまで至る認識は得難い。つまり、色々知らないとつながらない。そんなあたり前のことを、でも実感として味わうことができた台風の日でした。


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