伸びやかにつくられて

2016-10-25

〈お江戸でまたも素敵な空間と作品たちを体感してきました。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。昨日はブログをお休みし、申し訳ありません。

 

日曜から、また一泊で東京出張でした。向こうにお住いのお客さまと実施設計打合せというのが本来の志事ですが、やはりせっかくですので、限られた時間の中で、2つの素敵な企画展示を見てきたんです。

 

ひとつは世田谷美術館で開催されている『志村ふくみ 母衣への回帰』展です。草木染めの大家の作品展、実は先に京都でやっていたのを見逃してしまっていたのもあって、久しぶりに世田谷美術館を訪れました。

 

冒頭の写真がそれ。建築家・内井昭蔵の代表作だと私は勝手に思っています。今回、屋根の色が変わっていたり、後ろにゴミ処理場の煙突が見えたりと、「?」な変化もありましたが、でもその上品な表情は健在です。何枚かご紹介しましょう。

 

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砧公園という広い都市公園の中に、高さを抑えて伸びやかに広がる建築。フランク・ロイド・ライトのスタイルを踏襲したような装飾性と水平性が、白い四角いハコばかりの昨今の美術館建築とは一線を画する美しさです。

 

そして、志村ふくみさんの草木染めの着物たちもとても素晴らしかった。京都展の時の画像ですが、WEBでいいのがあったので、合わせて載せておきます。この風合いはとても写真では伝わりませんけれど。

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近江で工房を営む志村さん、この3つは琵琶湖の風景をイメージしたもののようです。特に右の作品「青湖」が強く私の胸を打ちました。

 

そして、もうひとつ行ったところは、小平市にある「平櫛田中彫刻美術館」です。ここも以前から気になっていたところなんです。平櫛田中(ひらくしでんちゅう)という彫刻家も、そしてその旧宅の建築も。

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正面が旧平櫛田中宅で、内部も見られます。そして左側に隣接してRC造の彫刻美術館がある。旧宅は大江宏の設計で、彫刻と併せてこちらも是非見てみたかった。こちらも内部は撮影不可でしたが、少しご紹介しましょう。

 

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敷地のすぐ南側に玉川上水が流れ、敷地内にも緑がたっぷり。そして平屋の木造家屋が庭の間を縫うように広がっていました。ちなみに最後の写真の左に見える大きなものは、彫刻用に取り置きされていたというクスノキの巨木です。

 

そして企画展示は『岡倉天心と平櫛田中』展。長い間行方がわからなかったという「尋牛(じんぎゅう)」という作品が展示されていました。それもよかったのですが、私に響いたのはこの2つ。

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『森の行者』(木彫)

行者と蓮の花と台座、もちろんひとつの木から彫り出されています。木の年輪が蓮の池のようで、幻想的に感じられました。

 

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『落葉』(ブロンズ)

この、何とも言えない形と動きの味わい。これも写真ではわからないですね。

 

2つの美術館で、その2つの建物と2つの企画展を鑑賞し終えて、たまたまですが、なんだか共通しているものを感じたんです。ひとつには、自然と調和しながら水平方向に伸びて広がる建築のあり方に、近しいものを。

 

そして、染色と彫刻というジャンルの違う作品たちの、私に響いたモノたちが備えていたのは、単に作品としてそこにあるだけでなく、その周囲の空気へと滲み出ていくような感覚。凝縮ではなく拡散の方向性。

 

美術館、木造家屋、着物に彫刻、それぞれかなりサイズは違っていますが、どれもその大きさに関わりなく、伸びやかさ、広がりゆくもの、といった雰囲気を今回私に感じさせてくれました。

 

いつも出張前に、どの美術館、どの企画展示を観に行こうか、と思案する時間がまた楽しいのですが、おそらく今回こういう感覚を得たこと、そういう場所や空間を自分が選んだということにも、きっと理由があるのでしょうね。

 

ううむ、いま自分自身がそういう「伸びやかさ」のようなものを求めているのかなあ。ちょっと縮こまってしまっているのかなあ。素敵な空間と作品たちの余韻を味わいつつ、そんなことをつらつら考えながら帰途についた私だったのでした。


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