かたむきの糸

2016-10-29

〈建物が出来てきたら、イメージを膨らませつつ外構工事の内容を再確認します。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日は一日、車で移動続きの日でした。朝から高槻へ、その後吹田の現場、そして箕面の本社に寄って、最後は宝塚へ。芦屋へは帰らず、家に直帰してこの文を書いています。車移動ばかりで、ちと疲れ気味。

 

さて、吹田で進んでいる木の家の現場。竣工まで一ヶ月を切り、建物の方はほとんど出来てきています。今日はスタッフ平野とともに外構の打合せを、お客さまと現地で確認しながらおこなっていたんです。

 

冒頭の写真はその様子。このブログに何度も書いていますが、外構ののイメージというのは建物がある程度出来てこないと想像しにくいものですので、このタイミングでの現場確認はとても大事ですね。

 

写真で打合せするお二人の左側につくられているのが、建替え前にはなかった2台分の駐車場スペース。そして右側、玄関に向かって伸びている土の部分は、スロープになっているアプローチです。

 

アプローチを階段でなく長いスロープにしたのは、ここも場合によっては3台目の駐車場として使えるように。そして写真では見えませんが、駐車場とアプローチの部分に、今日は「糸」が張られていました。

 

建築現場で「糸を張る」というのは、今はない仕上がりのラインを糸によって明示し、基準にする、という意味です。糸といっても非常に丈夫な樹脂製のタコ糸のようなもの。それを最終の仕上がりラインでピンと張っておき、そこに合わせて仕上げを進めていくんですね。

 

そしてこの駐車場とアプローチは、それぞれに違った勾配のラインをもっています。駐車場は水が溜まらない程度の緩い勾配、そしてアプローチは全体の段差をならした、少し傾きが強いスロープに。

 

今日はそれを糸で示すことでお客さまにその感覚をもっていただき、なおかつその2つの勾配の間をつなぐ階段にはどのような段差が出来てくるかについてもイメージしていただく、という打合せだったのでした。

 

建物の内外を問わず、階段というのは踏み面の奥行きと蹴上げの高さの寸法がわかれば何となくイメージできますし、既にある階段の寸法を計ったりしながら、その妥当性を確認することもしやすい。

 

それに比べてスロープは、図面上で寸法が記入されていても、まずわかりませんね、それが出来上がるとどうなるのか。そして、既にどこかにあるスロープを計測する、ということもかなり至難の業です。

 

設計者としての私たちは、その勾配がきつすぎないか、緩すぎないかを経験によって判断できますが、それを伝えることはとても難しい。なので図面段階ではどうしても決めきれない部分だと言えるでしょう。

 

でも、この糸一本が施工場所に張られているだけで、図面上の話よりもずっとイメージしやすい。人間は、実際に眼で見た現物からの連想ではイメージを膨らませられる。特に、数字ではわからない傾きの感覚も。

 

言うなれば、張られていたスロープの糸は、施工のためのガイドでもあったし、そしてイメージのためのガイドでもあった。そこで私の頭に浮かんだのが「糸口」という言葉でした。「物事を展開させるきっかけとなるもの」という意味で使われていますね。

 

なるほど、現場で作業を進め得るきっかけとなり、そしてお客さまとの意思疎通のきっかけともなるもの、その糸口が「糸」だというのは、ちょっと出来過ぎの話やなあ。傾きを表してピンと張られた糸を見ながら、そんなことを考えていた私でした。


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