燃ゆる日輪のごとく

2016-11-08

『TOKYOオリンピック物語』   野地秩嘉 著   小学館文庫

 

「本を広げたかたちは、鳥のかたち。」

ご愛読、ありがとうございます。暮らしのプロデューサー、山口です。

 

実に読み応えあるノンフィクションでした。これは1964年の東京オリンピックの開催にあたり、それぞれの分野で素晴らしい成果を上げた日本人の物語です。今日は、2020年を控えた各方面の現代人に向けて。

 

グラフィックデザイン業界で生きる皆さまへ。

第一章は、デザイナー亀倉雄策の物語です。グラフィックの関係者なら誰もが知る不滅の傑作「東京五輪ポスター(最後尾参照)」制作の軌跡と、戦後のデザイナーという職能確立のための彼の戦いが描かれます。

 

IT業界で生きる皆さまへ。

第二章は、エンジニア竹下亨の物語です。今や常識の「競技結果の同時速報」は、東京五輪が史上初めて。その後日本の通信システムを一変させ、IT社会の萌芽となったシステム創成の苦労が描かれます。

 

飲食業界で生きる皆さまへ。

第三章は、料理人村上信夫の物語です。今とは違い洋食やエスニック料理の情報も少ない中、選手村の料理長として一万人の多国籍選手団に食事を提供する。そのための食材調達・保存・調理のシステム化に奔走した彼の働きが描かれます。

 

防犯・警備業界で生きる皆さまへ。

第四章は、セコム創業者飯田亮の物語です。2年前に創業したばかりの会社「日本警備保障」が選手村の警備を受託した。ビジネスチャンスを掴み、その後の日本に不可欠となった業種の草創期が描かれます。

 

映像業界で生きる皆さまへ。

第五章は、市川崑監督をはじめ、記録映画『東京オリンピック』をつくった人達の物語です。ヘイズを、アベベを、そして多くの一瞬のドラマを映像にとどめるため、侍とも呼ぶべき映像の職人たちがそれぞれの芸を集結させるさまが描かれます。

 

コミュニケーションデザイン業界で生きる皆さまへ。

第六章は、デザイン統括者・勝見勝をはじめ、大会の「ピクトグラム」を日本で初めてつくりあげた人達の物語です。今もメールなどで日本人のお家芸である、言語を超えた伝達手段「絵文字」。日本中のサインを変えたその取組みのドラマが描かれます。

 

そして最終章は「宴の遺産」と題され、上記の方々の奮闘がどう日本を変えたのかが描かれます。まさしく、日本人にとって戦後最大のイベントであった東京オリンピックを境に、この国がどう変わったのかが。

 

私は1967年生まれですから、東京五輪を知りません。その私を含めて現代に生きる人々にはちょっと信じがたい話ですが、本書によれば、それ以前の日本人は、団体行動が出来ない、時間の守れない、個人主義の人間たちだったという。

 

そうであるなら、東京オリンピックという日本の総力を結集した一大イベントにおいて、日本人はついに、皆でひとつのことを目指して動くことを知ったのかもしれません。「日本のため」をキーワードにして。

 

そして本書に登場する人たちの胸にあったのは、戦後再び立ち上がった日本の姿、誇るべき、愛すべき故国のための燃えるような情熱だった。本書からはそれが強烈に伝わり、私も何度も熱い涙に誘われました。

 

著者によれば、今の日本人は「待っている」といいます。それが日本から元気を奪ったのだと。もうすぐ2020年、また東京オリンピックがやってくる今、私たちの先達が熱情をもって突き進んだ姿は、きっと元気を与えてくれるはず。

 

私は愛国主義者ではありませんが、日本という国を愛するものの一人です。私と同様少しでもそんな熱い心をもつ日本人には、必読の一冊と言っていいでしょう。

2016-11-08-02


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