緑の中のモダニズム

2016-11-09-02

〈事務所から近くなのにずっと行けてなかった近代建築に、ようやく出会えました。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

芸術の秋・好みの企画展を見て廻るシリーズ、続いております(笑)。今日はKJWORKS阪神の地元、芦屋にある「滴翠美術館(てきすいびじゅつかん)」へ、空き時間を利用して行ってきましたよ。

 

ちょうど今、「奏でる茶 ~伝来の茶道具」展がおこなわれ、同館所蔵の茶道具が見られる、というので食指が動いたわけですが、実は以前からこの美術館の建物も気になっている、ということもあったんです。

 

この美術館は元々、大阪財界で活躍した四代山口吉郎兵衛が住む邸宅でした。吉郎兵衛は号を滴翠と称する藪内流の茶人だったそうで、今回の展示も代々の藪内宗家による作品達が並んでいましたね。

 

そしてこの邸宅は、昭和初期のモダニズム建築家、安井武雄による設計です。安井武雄と言えば、大阪倶楽部、高麗橋野村ビル、大阪ガスビルなどの設計者。そのデザインは、モダニズムの中の「自由様式」と言われた独特のものでした。

 

私は今、木の家づくりの志事をしていますが、大学の建築学科では建築史を専攻していました。卒論も大阪のモダニズム期の建築について書いたくらいで、その頃の建物については大いに興味があります。

 

滴翠美術館が安井の作品であることは知っていたのですが、なかなか来ることが出来ていなかった。近くだと余計に行かなかったりしますよね。今回は好みの企画展と絡めてようやくのご訪問、というわけ。

 

冒頭の写真はその外観ですが、お庭の緑に埋もれてあまり見えませんね。でもこの緑の中のモダニズム、という感じがとても私には好ましかったです。他にも少し撮ったので、ご紹介いたしましょう。

 

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これが美術館の入口。邸宅の頃の玄関とは違う場所です。勝手口かな。

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やはりガスビルなどにも通じる、「安井武雄調」としか言えない雰囲気が漂っています。

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昭和初期、モダニズムの香りがします。撮影は出来ませんが、茶室なども見られて素晴らしかったです。

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2階バルコニーの向こうには、ライトの山邑邸。そしてずっと大阪の方まで見渡せました。

 

 

ちなみにこれが、昭和8年の建築時の写真だそうです。大きいですね。冒頭の写真に少しこの塔が写っていますよ。

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じっくりと安井武雄デザインを堪能し、そして茶道具の展示も味わって帰途につきましたが、実はこの滴翠美術館がある山芦屋というところは、他にもたくさんの豪邸、それも錚々たる建築家の作品がいくつもあるんです。

 

滴翠美術館の道向かいには村野藤吾による中山悦治邸があります。中山製鋼の創業家の邸宅で、現存します。WEBからの写真ですが、こんな感じです。

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これもまた、村野調があちこちに見えますね。

 

他にも、村野藤吾の師匠である渡邊節の設計による松岡潤吉邸(1932年・現存せず)も建築史の世界では有名です。また、住友財閥の建築家、竹腰健造による渋谷義雄邸(1918年)も現存しています。西山幼稚園の北側。

 

このような「阪神間モダニズム」とも称される素晴らしい建築達が建ち並ぶ山芦屋。かつては今よりももっと、他にはない独特の雰囲気を漂わせていたのだろうな、と想像できます。

 

時代がくだるにつれ、こうした素晴らしい建築が少しずつ減っていくのは哀しいことですが、しかし今でもこのエリアには多くの建築遺産がその姿を見せてくれていて、私にはとても魅力的でした。

 

先日東京で行った根津美術館もそうですが、美術館探訪というのは、企画展そのものと建築と両方堪能できたなら、なお楽しい。今日もまたそうした時間を過ごすことができて、至極満足の私だったのでした。


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