こもりと広がり

2016-11-15

〈空間を仕切るかたちに、この角度がとても面白い変化をもたらしていました。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日は午後から、あるリフォーム工事の図面と見積作成。晩ご飯の担当になっていたので早く帰らないといけなくて、5時までに必ず終わらせるべく、一気に集中しての作業でした。

 

そうして目の前の書類に集中しようとする時、普段はそう思わない自分の事務所が、妙に広く感じられたりしますね。そしてそこから、先日東京のIFFTで見たある小さな空間を思い出していたんです。

 

冒頭の写真がそれ。小泉誠さんによるデザインの「働楽庵(はたらくあん)」と名付けられたこの小さなスペースは、簡単に言えばオフィス内のパーティションのようなモノの新しい提案でした。

 

オフィス内のパーティションというのは、人が座った時に隠れるくらいの高さの仕切りです。スペースとしては全体が一つだけれど、座るとある程度自分のスペースが確保される、という感じのもの。

 

でも、この働楽庵はちょっと変わっていました。まず形が四角でなく六角形です。そして、屋根がついている(笑)。そしてカウンターや小さなソファのような椅子もみな、六角形に合わせた形になっていますね。

 

最初、えらい変わったもんやなあ、と思ったのですが、でも実際に入って体感してみると、これがなかなか具合がいい。空間の「閉じる」感と「開く」感のバランスが、妙に落ち着いた気分にさせてくれました。

 

六角形の一辺は中心角でいうと60度で、全体の1/6です。このブースは周囲360度のうち、壁はだいたい5/6が囲われていて、屋根は3/6くらいの範囲が覆われている、という構成のようでした。

 

その囲われ具合が、「こもる」感じでなかなか心地いいんです。四角いブースよりも「円」に近いからでしょうか、全体に角ばっておらず、柔らかい雰囲気を醸し出していて、狭さをあまり感じさせません。

 

そしてまた、この角度でカウンターと椅子が配置されているのも、90度で配置されているのとはずいぶん違う感じを受けます。座る姿勢の自由度が高いというか、色んな使い途を考えることができそうな。

 

私も家の間取りを考える時、敷地の形状によっては真四角でなく、角度を振った形にすることがあります。その場合、家の中に120度や135度の角度が現れて、それがまた空間のつながりに独特の感覚をもたらしてくれたりもするんですよ。

 

でも、この極小空間の中に120度が出てきた時にこうなるとは、想像しませんでした。中にいる人が向く角度によって、こもって集中できそうな空間になったり、半オープンの広がりある空間に感じられたり。

 

最近は、働き方の形態のひとつとして、シェアオフィスやコワーキングスペースといったスペースもあちこちに登場しています。そういう場所に、一部こんな「真四角でない」仕切りがあったら面白いですね。

 

部屋全体が四角の時、どうしてもその使い方も直角の考え方に縛られがちです。でも、ほんの少しこうした自由な発想の部分があるだけで全体がむしろ活き活きしてくる、そんなこともあるのではないでしょうか。

 

そういった「無意識にあたり前としていること」を少し崩すと、空間はとても面白くなったりする。小泉さんのこのブースは、そういう意味で私にはとても愉しい刺激であり、眼から鱗を落としてくれました。

 

日々の志事でなかなかこういう試みは出来ないので、余計に意義深く感じる。IFFTという新しい取り組みをお披露目する場にふさわしい、色んな人に刺激をもたらしてくれた展示ではなかったかと想うのです。


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