やさしい仏道

2016-11-28

『しない生活  ~煩悩を鎮める108のお稽古』   小池龍之介 著   幻冬舎新書

 

「本を広げたかたちは、鳥のかたち。」

ご愛読、ありがとうございます。暮らしのプロデューサー、山口です。

 

僧侶である作者のことを知ったのは、Facebookのニュースフィードに流れてきた、あるシェア記事でした。それは人生相談に関するもので、この著者による回答が素晴らしい、という紹介記事だったんです。

 

「男性を信じられないし、嫌い。話してもつまらないし、頼りにならない。コミュニケーションがとれない状況」というある女性の相談へ著者の曰く、「男性に対する期待値が異様に高いため、自縄自縛で苦しんでおられる」と。

 

この、相談者自身の視点の転換を促すような回答を私も面白いと思い、この人の本を読んでみたく感じた次第。そしてこのタイトル「しない生活」も、ある意味なかなか刺激的ではありませんか。

 

そして届いた本書を一読して感じたのは、やはり先の人生相談と同じように、現代人が陥っている色んな悩みを解決する術、ということでした。そしてそれが実は仏道の教えとも通じている、という中身です。

 

サブタイトルの通り、本書は108項目のエッセイになっています。この数になっている理由はおわかりでしょう、いわゆる煩悩の数ですね。著者はこの、現代生活における煩悩を解き明かし、柔らかくほぐしていく。

 

まず最初の項目のタイトルで、私はガツンとやられました。いわく「入ってくる情報が増えれば増えるほど心は乱れる」。そして、人は現実そのものを視ず、己の中で余計な情報を付け加えている、とも。

 

世の中のこと、他人のこと、そうしたありのままの情報に自分で勝手に「わかってくれない」という情報、言い換えれば妄想を付け加え、勝手に心配し、悩み、怒っている人々。なるほど非常にわかり易いですね。

 

そしてその人の心の動きの元になるのが、「支配欲」や「承認欲」といった煩悩である。そのこと、己の中を素直に、ありのままに視てあげることが大切。本書を貫いて感じられる主張は、そういうものでした。

 

ありのままに視ることが難しい理由として、本書のいたるところに書かれるのが、人間の脳の働きです。本来動物の一種である人間の脳が、自然界で生きていくための機能、それが煩悩を生んでいるのだ、と。

 

人間の脳がそう出来ているのだから、それは仕方ない。しかし社会をもつ動物である人間としては、脳が発生させる感情とそれに乱されがちな心を、もう少し消化し、昇華したいもの。

 

そして、仏道とは本来、そうしたものである、著者はそう言います。「仏道とは、乱れる心を丁寧に解剖してみせる心理学でもある」という記述に、私はちょっとした感動を覚えたのでした。

 

私はそうした仏の教えを学んだことがありませんが、こうした平易な、穏やかな、しかも今風の描き方でそれを伝えてくれるのは、面白いですね。この文体には好き嫌いがあるかもしれませんが(笑)。

 

すらすらっと読めそうですが、実は色々と深いことが書いてある。読み飛ばしてしまわず、ちょっと噛み締めながら、己の今までを思い浮かべながら読むとより効果的な一冊だと感じました。


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