第二の人生

2016-12-4

〈木の家と合わせてつくられたテレビボードには、ご主人が生まれ育った家の一部が活かされました。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日は家具のお話。先日めでたくお引渡しさせていただいたお宅で、私もその日初めて見た家具があります。それが冒頭の写真のテレビボード。置き家具ですが、家と一緒にKJWORKSでつくったものです。

 

天板と下の棚はブラックチェリーの無垢板で出来ています。そして脚ですが、なんだか普通の家具よりも太い感じですね。そして写真ではちょっと見にくいですが、表面に何か皺のような模様がありますよ。

 

皆さんなんとなくおわかりでしょうか。この脚は、木の家に建て替える前の家の部材を使っているんです。それは、和室の床柱。柱をいくつかに分割して天板を支える脚として再生した、そんな家具なんですね。

 

この新しい木の家にも畳の間がありますが、そこにそのまま床柱をもってくると、少し雰囲気が違う。お客さまとお話をしながら設計の平野の方で色々と考え、こうした再生方法になったのでした。

 

このお宅に限らず、住まわれていた家の建替えの場合は、「前の家の想い出を新しい木の家に移し替える」ことを、私たちからご提案しています。解体の前に「何か残しておきたいものはありますか?」と。

 

「そういうことが出来るんですか?」とちょっと驚かれることもあるし、逆にお客さまの方から、そういうことは可能ですか?とお聞きになる場合もあります。でもどちらの場合も、喜んでいただけますね。

 

何を残して再生するかはその時々で違いますが、やはりこうした何か象徴的な「柱」はその対象になることが多いようです。でも、その再生方法がそのまま「柱」にはならないところが、また面白かったりします。

 

やはり木の家全体の雰囲気を壊さない程度に使わないといけませんから、それを考えつつ上手く「アクセント」になる形を模索しご提案するのも、私たちつくり手の技の見せどころだと言えるでしょう。

 

そんな中でこうした「家具」の一部として再生するのも上手い方法のひとつだと私は思っています。元の建築部材が丸々無傷で使えるとは限らないし、その点家具なら、寸法に合わせて形を考えられますから。

 

例えば、元の家の太い大黒柱を、何枚かの板にスライスして、それを接ぎ合わせてダイニングテーブルの天板にしたこともあります。大黒さんが生まれ変わったケヤキ材の立派なテーブル、素敵でした。

 

今回の場合も、元の床柱には床框や落し掛けとの取合部に欠込みがあったし、裏側も削らないといけない。そういう制約の中で、いつも皆が見るテレビボードに再生というのは、なかなか良い方法ですね。

 

この、ちょっと意表を突いた感じがまた楽しく、あまり無骨にならないデザインでまとめられていて、当日その形を初めて見た私にも好感がもてましたし、お客さまもとても喜んでおられたのが何よりでした。

 

家を建てる時、やはり建築主としてどこかしら力を入れた箇所、あるいは住んでいて気に入っておられた箇所があると思います。そしてそれは、その家で生まれ育った次の世代にも伝わるものですよね。

 

親が大事にしていたその部材を活かしたい、また自分が好きだったあの雰囲気をどこか新しい家にも宿らせたい。そういう想いが生じるのはごく自然なことだと思うし、そう思ってもらえる家も幸せに違いない。

 

そしてほんの一部ではあれ、新しい木の家で違った役割を担うことで、またその部材の第二の人生が始まる。とても素晴らしいことではありませんか。良いご提案が出来た私たちにも、とても嬉しいことです。

 

ちなみに、この家具の上にある四角い穴は何でしょう?これはテレビを壁掛けで設置した際の、配線用の穴です。せっかくつくった素敵な家具の上に乱雑な配線がきては台無しですから。

 

壁への設置で穴は隠れ、配線も見えず、テレビボードの美しい天板もそのまま全部見えて、使えて、すっきりですね。この写真ではちょっと変ですが、テレビやDVDデッキが設置された時に効果がわかる。

 

壁掛けテレビ、そしてこの壁内空間を利用した配線の工夫。なんだか、想い出の床柱がこれから始める第二の人生に華を添えるためにつくられたように、その日の私の眼には見えたものでした。


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