四季のアジャスター

〈ヨーロッパ生まれの、でも日本の住宅にもよく馴染む機能のモノを見てきました。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日はとても冷え込んだ一日でしたね。そんな午後、ちょっとしたメンテナンス工事をさせていただきに、この春にお引渡しをした宝塚の木の家へとご訪問してきました。

 

この寒さ、先月火入れ式をおこなったこの家の薪ストーブが元気に活躍してくれているかな、と思いながらお邪魔をしましたら、あれ?部屋は暖かいけれど、もうストーブは鎮火してしまっていたんです。

 

「朝から点けていたんですけど、もう暑くて」とお客さま。断熱性能の高いこの家に、割に大きめの薪ストーブは充分過ぎるスペックなんですね。厳寒期には至らない今、ガンガン燃やすと暑くなるくらいに。

 

特に、寒くてもお天気が良いと、吹抜けに面した上下階の南向きの窓から、燦々と陽の光が一緒に熱を運んでくれます。日向の床の小国杉もとても暖かくなっていて、その熱取得量も非常に大きいようです。

 

そして、今日の冒頭の写真。ストーブが燃えている間は日差しを少し遮ってもいいくらい、ということで、この装置が稼働していました。これは、よく店舗などで見る、跳ね出し式の「オーニング」ですね。

 

オーニング(awning)とは英語で、「日除け」「雨覆い」という意味。その名の通り、ヨーロッパ生まれのモノですね。洋画を観ると、道沿いの洒落たカフェにこうした深いオーニングが活躍していたりして。

 

日本には1970年台に輸入されたらしく、やはり店舗をそのはじめとして、徐々にオーニングが広まっていったらしい。そして最近は、こうして住宅にもよく使われるようになってきた感があります。

 

操作には手動と電動がありますが、両側にある腕を伸ばしたり折りたたんだりすると、巻き取られていたシェードが出てきて、布による大きな庇が出来上がる。その可動性がオーニングの命と言えるでしょう。

 

というのは、庇の出幅を季節によって調整できることが、四季の大きな寒暖差をもつこの国にとても相性が良いから。夏はしっかりと出して日陰をつくり、また梅雨時期には雨除けとしても使えますね。

 

そして、冬には格納しておいて日差しを充分に屋内へ。時にはこのお宅のように、冬でも出し入れの調整が必要な場合もありますが(笑)。とにかくそれが、操作ひとつで自在になるというのが非常に便利です。

 

この写真のものも最大出幅は2mくらいあって、それを柱なしで支えるのですから、オーニングが取り付く壁には大きな力がかかります。なので設置にあたっては、設計段階からの検討が欠かせません。

 

今日もお客さまと話していたんです。この木の家の周辺に建つ、あるいは今建とうとしている家にも、軒や庇の全くない真四角な家がたくさんあって、あれは何故あんな風な建て方になるのだろうか?と。

 

陰影をもたないそうした家には、日本の四季、その気候の移り変わりにアジャストしていく能力がない。そんなツルツルの家には、このような深いオーニングも、おそらく似合いませんね。

 

このブログに何度も書いたことですが、寒暖の差、晴れと雨の差に追随していくアジャスターともいうべきモノが、軒や庇という装置です。そして欧州生まれのこのオーニングも、その目的によく適っている。

 

出自は違っても、このひとつの木の家の中で、木製庇とオーニングは共に同じ機能美をもってよく調和しています。これこそまさに現代日本に相応しい家の姿であるように、私には思えたことでした。


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