間取りのココロ 002〈家に入るまで〉

〈家の出入口には、やはり玄関と呼ぶに相応しい品を備えてあげたいですね。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

間取りアドバイザーの志事をもっと知っていただく意味で、私がつくる間取りの考え方、方法論をご紹介する「間取りのココロ」シリーズ、第2回は間取りの中へ入る一歩手前、アプローチと入口の話を。

 

普通はどの家にも玄関があり、家である以上は必要なもの。「玄関は家の顔」という人もいますね。でも、街を歩いていて時々見かけるものに、これは玄関と呼びたくないなあ、という感じの出入口があります。

 

そう私が思う時、たいていは「品がない」と感じています。私は間取りをつくる上で、やはり玄関は家への入口である以上、そこは品よくあってほしいと思うし、そのためにどうすべきかは常に考えるところ。

 

そのためにまず「こうありたい」と思うポイントは、「引き」というものです。道に面してすぐに玄関ドアがくるようなことは避けたい。できるだけ距離をとって、ゆとりのあるアプローチにしたいですね。

 

距離を確保するのが難しくても、たとえばドアに至るまでに一度方向転換する、あるいは真っ直ぐでなく曲線のアプローチにするだけでも、だいぶ「引き」が出ます。そうした工夫は何かしら採り入れたい。

 

もうひとつはポーチの扱い。しっかりと屋根で覆いたい。それは雨に対する用途上の意味もありますが、そこに「陰影」を生むという効果もあります。2階建でも玄関は下屋(げや:部分平屋)なら最高です。

 

この2つが共に工夫された玄関に、私は「品が良い」という感じを受けます。今日の冒頭の写真もそんな木の家のアプローチと玄関。とても余裕のある、品の良いかたちではないでしょうか。

 

写真に近い例を上げてみると、こういう間取り。玄関は少し奥まらせ、ポーチをしっかりと覆う屋根がある。南と北に2つの庭をもつ間取りという意味では、前回の角度を振った家とも通じるものがありますね。

 

この敷地は南側道路ですから自然とアプローチは長くなりますが、北側道路であっても、アプローチに「引き」を演出する方法はいくつもあります。要はそういう意識こそが大切なのだと思います。

 

この家などは、アプローチに段差がある、ということが「引き」になっています。そして深々と屋根がかかるポーチは、とても奥ゆかしい雰囲気を湛えていて、まるでドアの前のもうひとつの部屋のようです。

 

ただ、敷地面積に余裕がない場合もありますし、常にここまでのゆとりあるスペースが生み出せるわけではありません。でも、「引き」と「陰影」を何かで生み出す、という強い意志があれば、そうした場合でも間取りは違ってくるはず。私はそう思うんです。

 

例えばこちらの木の家。敷地の「余白」はほとんど庭に使って、玄関前はいわゆるオープン外構になっています。でも、玄関ドアを奥まらせ、その前にあえて格子を設置し、なおかつ2階を出っ張らせることで、引きと陰影がつくられています。

 

そのポーチ部分も室内にすれば、家がもっと広くなるではないか。そういう考え方もあるかもしれませんね。でも、玄関ドアを入った先は言ってみれば通過動線であり、必要以上に大きくしても仕方ないのでは?

 

無論、そのあたりはお客さまとの話し合いですが、私はそうした外観上の「品の良さ」もとても大切だと思っていますし、それは私たちつくり手からご提案すべきものだと信じています。

 

なぜなら、家は単なる建物ではなく、「街の一部分」だから。美しい心地よい街に住みたいと思うのは人にとって自然なこと。そしてそれは、個々の建物の「品の良さ」を積み重ねてつくるしかないのですから。

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