透過の深淵

〈三宮で、思いがけず硝子のまた新たな魅力に遭遇しました。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。今日は小さな美術館でのひとときがあったので、そのお話を。

 

午前中、三宮にて所用がありました。それがあっさりと予想外に早く終わったので、久しぶりにちょっと目の保養をと思って、あまり知られていない(気がする)三宮の「美の名所」に立ち寄ってきたんです。

 

そこは京町筋にある「KOBEとんぼ玉ミュージアム」。小さなスペースでの展示ですが、これがなかなか奥深い。今日は予備知識無しに寄ったところ、冒頭の写真の「ペーパーウェイト展」が開催中でした。

 

皆さんは「とんぼ玉」をご存知ですか。ランプワークと呼ばれる「炎で炙って成形する」ガラス工芸で、穴の開いた玉(ビーズ)のことです。模様のあるガラス玉を蜻蛉の複眼に見立ててこう呼ばれるそう。

 

とんぼ玉は現代にも多くつくられていますが、その歴史はとんでもなく古く、それはまさしく硝子の歴史に等しい。こちらのミュージアムには、そうした古代ガラスのとんぼ玉が常設展示されているんですよ。

 

私も3年前、滋賀はMIHO MUSEUMでの展示から、古代ガラスの魅力に取りつかれてしまいました。そしてその一端が常設で観られるというこちらのミュージアムのことを知り、時々目の保養に訪れています。

 

3年前の古代ガラス展で、松島巌というガラス作家のことも知りました。古代ガラスに惹かれ、その技法を現代に甦らせようとする作家で、その作品も古代の味わいを今に活かすような、素晴らしいものです。

 

とんぼ玉ミュージアムには、「羽原コレクション」という古代ガラスの蒐集物、そして松島巌やあるいは矢野太昭といった、古代ガラスからインスピレーションを受けている作家の作品も展示されています。

 

今日もそんな感じで、紀元前という時代にアクセサリーなどとして使われていたとんぼ玉、その深い色合いや味わいを楽しみましたが、実は企画展である「ペーパーウェイト」たちの見応えにも驚かされた次第。

 

冒頭の写真からも伝わるかと思いますが、いわゆる文鎮ですからとんぼ玉よりもサイズが大きくて、その分単なる表面装飾でなく、硝子のもうひとつの魅力「透過」を存分に活かした技術が駆使されていました。

 

写真で言うと特に左の2つ。透明なガラスの中に埋め込まれたものが、水の中のように見えていますね。特に左上の作品は、単なる硝子の球体の中に、渦を巻きながら深く深く沈んでいく宇宙を視ているようです。

 

これはまさに、ガラス工芸にしか表現し得ない世界ではないでしょうか。その透過という表現がもたらす深みは素晴らしく、元々硝子の質感が好きな私に、またひとつ違うその魅力を教えてくれたようでした。

 

そういうものに思いがけず出会うことはとても楽しいし、眼福を得てなによりの気分転換になりますね。硝子の美しいペーパーウェイト展、まだ一ヶ月以上会期はあるようです。ご興味おありの方は、是非に。


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