動きと安らぎの形

〈自然界にも多く生み出される幾何学模様は、きっとその内部空間にも愉しさが生まれることでしょう。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

年明け以降ずっと計画を進めてきている「木の保育園」、今日はまたお客さまとの打合せ内容を反映した図面を作成していました。まずは木の家をリフォームしてつくる保育園の計画が最初に実現します。

 

そのリフォーム計画には一部少しだけ増築する部分があるのですが、その部分を図面として表現しながら、私はお客さまが「こういう形にしたい」と言われたことに、とても納得できる気がしたのでした。

 

その小さな増築部は、六角形のかたちをしているんです。そしてそこは、大きな部屋にくっついていて、でもちょっと入口がわかりにくい感じのスペース。そう、いわば「子どもの隠れ家」というわけですね。

 

そういう小さな隠れ家的な場所を六角形で発想されたのにはお客さまなりの「楽しそう」という想いがおありだったと推察しますが、しかし建築的に言ってもこの形状は、四角形とは違った特徴をもつもの。

 

今日の冒頭の写真は、自然の中の六角形の代表とも言える「蜂の巣」です。これ以外にも、いわゆる「ベンゼン環」とか雪の結晶とか、トンボの複眼とか亀の甲羅とか、自然界に色々と六角形のものはあります。

 

あるひとつの面を同じ形でずっと埋め尽くすことを「平面充填」と言いますが、これが出来るのは正三角形、正方形、正六角形の三種類しかありません。蜂の巣は、まさに正六角形の平面充填の見本ですね。

 

ではなぜ蜂の巣は正三角形の連続ではないのか。それは、120度という内角をもつ正六角形が、その辺あるいは角の数が多い分だけ、外部からの力を他に分散しやすく出来ており、結果として安定しているから。

 

正三角形はがっちりと強度は高いが、分散の数が少なすぎて脆い。正方形は直交2方向のため、平面充填でも平行四辺形へと変形しやすい。力を他の5方向へ分散する正六角形が最も柔軟な強さをもつんです。

 

その「衝撃吸収力」という柔軟な強さをもつ平面充填の形は、「蜂の巣」という名前をそのまま冠して「ハニカム構造」という軽量かつ丈夫な工業素材となり、例えば航空機の機体などに活用されていますね。

 

そしてこの、まさに「安定の象徴」とも言えるかたちは、内部に居る時にもその安定の雰囲気を人に感じさせ、四角形でない「動きの面白さ」と「安らぎ」とを、同時にそこに生み出してくれることでしょう。

 

そんなことが、六角形の隠れ家を図面にしながら大いに感じられました。「ここは面白い場所になるぞ」と。そして、建築のプロでないお客さまがそういうご要望を出されたという、そのセンスに感心した次第。

 

変化と安らぎが共に満ちた、木でできた六角形の小さな部屋。そこでの子どもたちはとてもいい顔をしている。そんな気がします。まだ図面段階の検討ですが、一体どんな風に仕上がるか、今から楽しみな私です。


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