待ち侘びの花

〈今年も芦屋の事務所のすぐ前で、この緋色の花が眼を楽しませてくれます。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

もうすぐお彼岸、だいぶ暖かくなってきましたね。今日は朝からよい天気で、私の芦屋の事務所「木の空間」が入っているビルのすぐ前では、冒頭の写真の花がいよいよ満開になろうとしていますよ。

 

この樹は「寒緋桜(かんひざくら)」という、れっきとした桜の樹です。芦屋に来てから3回めの開花ですが、単にビル前にあるからだけでなく、この花の時季にはとても気になって、毎日観察している私。

 

今日書くにあたって調べてみたら、一昨年に寒緋桜との出会いのことをブログに書いていました。芦屋に来るまで見たことがなかったので、その特徴的な生態が面白く、いっぺんで好きになったということを。

 

そう、毎日観察しているのもその生態ゆえなんです。写真でわかるとおり、この桜は下を向いて咲きます。そして花弁が開ききることはなく、筒状のまま。なんというか、ボソボソっと咲くんですね。

 

なので、満開なのかどうなのかがわからない。しかも、時期を過ぎると、椿の花と同じようにボトッと花全体が落ちる。染井吉野を始めとする春の主役の桜たちとは、全く違う咲き方、散り方だと言えるでしょう。

 

その美しい色彩とは裏腹に、その生態には、利休がいう「侘び」に通じる風情がある。そう私は感じるし、そこが好きなんです。満開を誇り、さらに散りながらそれを誇る桜とはまさに対照的ではありませんか。

 

「寒緋桜」の名の由来は、多くの桜より少し前、まだ寒さが残る頃に咲くことと、その花の色からでしょう。「緋寒桜」とも言うそうですが、咲く時期も同じ「彼岸桜」と紛らわしいため、寒緋桜になったとか。

 

春を待ち続け、そして寒さに別れを告げるように咲く花。しかしその咲き方には暖かさよりもむしろ寒い季節の風情、「不足の美」とも言うべき味わいがある。別れの季節とも言えるこの時期に相応しい桜。

 

芦屋で志事を始めてからの私にとって、春はこの寒緋桜が教えてくれるものになりました。今年もまた「満開」という言葉が似合わないこの桜を眺め続け、物思いに誘われるような時間を楽しんでいます。


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