印象のキャッチボール

〈この図面が建物になるとどうなるか。その情報共有がもたらす効果は色々あります。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

このところ私が携わる志事は、主として設計段階のものが多いので、以前のように木の家の現場を皆さんにご紹介したりという記事がこのブログに上げられておらず、正直自分でもちょっと歯がゆい気持ち。

 

でも、設計段階の作業はブログでご紹介しにくいというだけであって、志事自体はなかなか充実しておりますよ。打合せ、図面作成、見積り、そして工事のための現地下見など、やることはいくらでもあります。

 

とはいえ時には少しご紹介を、ということで、今日は建物の完成予想図的な3Dモデルの絵を上げてみました。「木の保育園」の計画を新築、リフォーム、敷地取得など様々な方面から詰める中でつくったもの。

 

あくまで「木の家」の延長線上にある、家庭的な雰囲気をもった保育園。園庭とのつながりをつくる大きなデッキと、眺望を楽しめるバルコニーをもった保育園。薪ストーブのある保育園。そんなイメージです。

 

実は、残念ながらこの絵の新築建物は途中で計画変更になってしまいました。やはりこの敷地の中にこの建物では園庭の面積が確保しにくいということで、もっと広い別の敷地で計画し直すことになったんです。

 

色々と検討した絵ですので、残念な気持ちもあります。しかし、このような3Dの絵を完成イメージとしてつくることで、図面だけではわからなかったことがお客さまに伝わり、よりよい方向へ変更になった。

 

なので結果的にはよかったし、それよりも建物の姿を共有出来ないままに建ててしまってから後悔するほうが、よっぽどこわいことですね。そう思えば、こうした「完成イメージ」の共有の意義は大きい。

 

図面という3次元を2次元に投影した絵では、つたえられないものがある。図面を読むのが苦手な方には、それは何も完成イメージを想起しないですから。想像できないものに、人は印象を抱きませんし。

 

そう考えてみると、こうした3Dイメージには単にその建築の情報を共有するだけでなく、その完成した姿に施主が抱く印象を引出し、それを設計者へフィードバックする、という効果があると言えそうです。

 

いわば「印象のキャッチボール」のためのツールということですね。この「印象」というのは、その建物に愛着をもてるか、という部分に関わってくる、実は非常に大きな意味をもつ要因なのでしょう。

 

幸いなことにこの絵の建物は、よい印象をお客さまに抱いてもらえたようです。「新しい敷地でも、こういうイメージで」とのお言葉をちょうだいでき、時間をかけてこうした3D画像をつくった甲斐がありました。

 

建築の設計というものは、とことん理詰めで固めていくものではなく、こうした「印象」というような、どちらかというと好き嫌いに類する話によって決まる部分もある。そこがまた面白いのではないでしょうか。

 

デザインとは、まさに理論と感覚との間を揺れながら進んでいくもの。そして節目節目で依頼者とつくり手各々の印象をキャッチボールしながら、お互いに好きでいられるものへと着地する行為、なのでしょうね。


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