遺るサンプル

〈たまたま近くでやっていた建築関係の展示、そのレトロな愉しさが思わぬ収穫でした。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日はめずらしく梅田での用事。その帰り、少し時間に余裕があったんです。近くに何か催しごとでもないかと調べてみたら、すぐ近くでやっていた私好みの展示を見つけたので寄ってまいりました。

 

すぐ近くというのは、グランフロントの12階にある「LIXILギャラリー」です。13階がLIXILのショールームで、その下の階にはKOIZUMIと川島織物のショールーム、そしてこのギャラリーがあります。

 

以前は「INAXギャラリー」と呼ばれていたこのスペース、昔は四ツ橋にありました。会社がLIXILになり、今はグランフロントに。私が建築を生業とし始めた頃には既に、興味深い企画展を開催していましたね。

 

東京と大阪、どちらもたまに、その内容にビビッときたら覗いてみることにしています。そして今回は、冒頭の写真の通り「武田五一の建築標本」展でした。これがまた、ある意味マニアックな面白い企画。

 

皆さんは武田五一という建築家をご存知でしょうか。ほとんどの方はご存じないと思いますが、この方は「関西建築界の父」とも言われる人物。明治から戦前を生きた、近代日本を代表する建築家の一人です。

 

関西の皆さんが一番よく知っている武田五一の設計作と言えば、京都市役所でしょうか。京都帝国大学と京都高等工芸学校(現・京都工繊大)に建築学科をつくって教鞭をとりつつ、多くの建築作品を残しました。

 

私は大学時代は建築史研究室にいましたし、近代建築のことを卒論にしましたので、この世代の建築家には詳しい方だと思います。なので「武田五一」の文字に惹かれて訪れてみて、やはり非常に面白かった。

 

さて、この企画展に謳われた「建築標本」とは何でしょう。例えば今回、以下のようなものが展示されていましたよ。

 

これに類するものはKJWORKSにもあります。所謂「サンプル」ですね。建築の仕上材や設備機器などを、実物で検討し決めるためのもの。この展示は、武田五一が取り寄せた当時のサンプルたちなのでした。

 

しかし、サンプルとは言え、時代を経てそのレトロ感がとても楽しいし、今や珍しいものの筈。上の水栓カランなどもいい雰囲気で、これらが今も京大と京都工繊大に遺されている、ということが凄いなあ。

 

例えばタイルであったり、ガラスであったり、塗りの見本であったり、建具のミニチュアであったり、どれも出来上がった建築とは違う、部材になる前の姿で見られるのは、実は非常に貴重なことだと感じました。

 

サンプルはたいてい、建築が出来たら廃棄される運命にあります。明治期のこうした実物見本を100年経った今見られるのは、「標本」という言い方の是非は別にして、建築関係者が観るべき展示でしょう。

 

まして私のような古いものが好きなヒトには、たまらないものがあります(笑)。こういう貴重なモノを観るひとときは、建築とは「永く遺る」ことが第一義だ、という思いを新たにする、そんな時間でした。


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