取毀しにおもう

〈自宅の周辺では、建築物の更新がいくつも進んでいるようです。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。今日は私の住む界隈のお話を。

 

私の自宅近辺では、何故かわかりませんが、最近かなり解体工事ラッシュになっています。朝の通勤時に状況を日々眺めていると、今まで見えなかったその建物の構造や内部が、徐々に露わになってきている。

 

この、解体中の建物を見るのが、また建築屋には面白んですね。これをマニアックとも、職業病とも言いますが(笑)、それは少し大袈裟に言うと、その建物の現状を生んだ歴史を見るような気がするからです。

 

例えばこのビル。路面店舗と上階は住宅だった模様。住宅部はもう永く無人で、ボロボロでした。店舗の方も立ち退かれ、いよいよ解体へ。かなり危険な状態だったので、近隣住民としてはホッとしている次第。

 

写真は今日の様子。骨組みは鉄骨ですが、その間を埋めている壁は木造ですね。そこに板を張ってタイル貼り。柱や梁部分の仕上げも含め、全て現場でモルタルを塗る「湿式工法」で、これが時代を感じさせます。

 

鉄で出来た建物と、水を使う湿式工法。あまり相性が良いとは言えませんね。今や工場生産品を取り付ける「乾式工法」が常識ですが、当時この規模の建物であれば、こういうつくられ方が普通だったのでしょう。

 

そしてもうひとつ、冒頭の写真の現場。鉄筋コンクリート造の古いマンションで、私が子供の頃からありましたから、少なくとも築40年超えのはず。ところがこの解体が進むにつれ、面白いものが見えてきました。

 

写真の通り、マンションの上から樹木が見えてきたんです。最初は屋上庭園か何かがあったのだろう、と思っていました。でも、どんどん建物が低くなり、かなりの巨樹だということがわかってきて、「?」と。

 

子供の頃にここらでよく遊んだものでしたが、こんな大きな樹のあるところがあったかなあ?何日か考えていて、昨日やっと思い出しました。「あ、お稲荷さんや」と。このマンションの裏に稲荷神社があった。

 

そして、今日は元々自宅作業のつもりでしたし、天気もいいし、ちと散歩がてら現場周りを歩いてみたんです。やはりそうでした。稲荷神社境内の大きな樹が、手前の建物がなくなって姿を現していたのでした。

 

境内から撮るとこんな感じ。このマンションは、稲荷神社の南と西を覆うように、L型平面で建っていたんですね。ちなみに冒頭の写真は南側の三叉路交差点から撮っていて、道の突きあたりなので非常に目立つ。

 

そしてこれは西側から。各住戸の入口と水廻りだった辺りの痕跡が見えます。おそらくこのマンションも、老朽化と面積不足で入居者が減り、ついに解体・建替えの時期に至ったのでしょう。勿体無いことです。

 

それにしてもこれ、何ともシュールな光景ではありませんか。私などはある種の美しさすら感じます。建築が寿命を終えて消え去る時、比較にならぬほどの寿命を生きる巨樹が、その威容を誇るように姿を現す。

 

建物が解体されて建て替わることは、地球資源や環境面から言うと減らすべきことですが、しかし人間が居る限りなくならない、宿命のようなもの。せめてそこから次世代の建物へ、何らかの学びを得たいですね。

 

私が解体現場を面白がるのは、そういう気持ちがあるからかもしれません。そして「次は自分ならこんなのを建てる」と考えるのも頭のトレーニングになる。大抵は実際に建ったモノに落胆することが多いですが。

 

この三叉路の目立つビル、次は何とかその偉大な生命を隠すことなく建てられないものか。それは地域景観にも寄与することだし、お稲荷さんのご利益もある筈。今日は、しばしそう夢想する時間でもありました。


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