日常を豊かに

〈日々の暮らしに欠かせない公共交通のデザインについて、感じ入る記事がありました。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日読んだ雑誌に大いに共感できる記事がありましたので、それを少しご紹介しましょう。AERAの最新号の特集「国鉄とJR」にあった、JR九州に関する記事。鉄ちゃん・鉄子の皆さんにも伝わる話と思います。

 

皆さんは水戸岡鋭治というデザイナーをご存知でしょうか。工業デザイナーとして長いキャリアをもち、列車の車両デザインにおいては第一人者と言える方です。JR九州の車両はみなこの水戸岡さんのデザイン。

 

今回の記事にもそのことが書かれていましたが、その中の一節に私は感じ入ったのでした。少し引用しましょう。それは、豪華列車や観光列車のデザインばかりが採り上げられがちなことに対してのこの言葉。

 

「九州の人が毎日使う通勤列車にこそ、私のデザインの哲学は凝縮されている。」

 

そして、この言葉には理由があり、それはJR九州4代目社長に掛けられた言葉だったそうです。「水戸岡さん、最も大事なのは通勤列車です。毎日当社を使ってくれる大事なお客さんを乗せているんですから」と。

 

私はこうした思想にとても共感をおぼえますね。ハレの日を彩る豪華な列車も良いですが、いつもの日常の役に立っているモノをより良くすることこそ、暮らしの豊かさに貢献することである、という考え方に。

 

そして、水戸岡さんのこうした想いが凝縮された最新車両が、昨年デビューした「305系」だと。JR筑肥線から福岡市営地下鉄に乗り入れて、多くの通勤客が使うエリアを走る列車。冒頭の写真はその内観です。

 

ここで、私は大きく頷いたのでした。この列車の一部車両は、床が無垢の木のフローリングになっているという。南米産のクルパウという木で、丈夫さとその色目が豊かなことから選ばれているそうですよ。

 

そして、座席の布地も華やかでなんだか楽しそう。唐津への観光気分を湧き立てるのが狙い、とのことですが、ごく日常的にこの列車を通勤に使う方々も、その移動空間がこんな風なら、きっと元気がでそう。

 

さらに、この車両の外観には透明感ある白色が採用されています。昨今は手入れの楽なステンレス製の通勤列車が多いそうで、JR西日本もまさにそれですが、この汚れの目立つ「白」はそれと逆行するもの。

 

ここでもうひとつ、水戸岡さんの言葉を。

「白い列車で床を木製にすれば、維持が大変です。でもそのほうが九州の風土や風景に溶け込み、乗客にもずっと喜んでもらえる。ファストフード文化が全盛だからこそ、公共交通のなかにはそうでないものを盛り込みたかった。」

 

いや、まさにこれこそ、暮らしを豊かにすることの根本にあるものでしょう。ファストを求める世界からはそれは生まれない。手間ひまかけて、時の流れと共にあってこそ、日常の豊かさは形を成すのです。

 

現代人の普段の暮らしに、電車とはもう欠かせない移動手段です。その公共交通にこうした「豊かさ」を盛り込もうとするデザイン、その思想は素晴らしい。それは家づくりにも大いに必要なものだと感じます。

 

宮崎へ帰省するとは言え、あまりJR九州は利用したことのない私。唐津もまた行きたい土地ですし、次回はこの305系に是非お目にかかってみたいものだと思った今日でした。


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