生きものありき

〈増築を伴うリフォームで、緑濃いお庭と建築との調整を話し合いました。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日は朝から、リフォームによる保育園づくりの現場へと赴きました。園庭となる外構の打合せのためで、元のお庭の樹木や石と工事とをどううまく摺り合わせるか、というあたりを実際の場所で話し合います。

 

リフォームだけでなく少しだけですが増築もあるので、その部分が既存の庭に及ぼす影響を考慮し、できるだけ自然なかたちでおさめるよう話し合っていくのですが、これが簡単なようで色々難しい。

 

大きな石を動かすのは非常に手間がかかるし、何度もやり直しはしたくありません。きっちりと位置や向きを決めて一発で済ませられるように考え、造園屋さんの意見も聞きながら内容を想定していきます。

 

また、増築部と当たってしまう樹木については基本的に「移植」という方法をとりますが、それも樹種によって、あるいは樹齢によって、本当にそれがベストなのかをよく吟味しておく必要があるんです。

 

移植には向いた時期もあるし、向いた樹種もあります。場合によっては移植してもきっと枯れてしまうだろう、ということもあるので、その場合は建築の方が譲歩したほうが良い、という判断もありえますね。

 

冒頭の写真の樹もそういう結果になりました。今は増築部の基礎がつくられている段階で、この状況ではまだこの樹には建築は当たってきません。でも、増築した先に今度はデッキをつくる予定なんです。

 

デッキには間違いなく当たってきますが、しかしこの樹はおそらく移植すると枯れてしまうのではないか。ということで、結局は「樹に合わせてデッキに穴を開ける」という方法をとることになりました。

 

建築本体でなくデッキですから、少々形状が変わっても特に支障はありません。それより何より、元の形にこだわることでこの樹の生命が失われてしまうことの方が、出来れば避けたい事態ですもんね。

 

そんなことで、この樹は伐られたり移植されたりすることなく、デッキに空いた穴から伸びた姿で元のまま生きることになりました。他の樹々も、枝は払ったりしてもなるべく無理な移植はしないという方向で。

 

私がそういう判断の部分でお客さまと意見が合った気がしたのは、やはり樹が好きな人ならわかる心情だった、ということでしょう。地面に根を張っているものを無闇に動かすことの怖さを知っている、という。

 

建築を図面通りつくるのも大事ですが、しかし今日のような場合には、やはり「生きものありき」で建築の方に融通をつけるという考え方も大切です。デッキの穴から樹が生えるのもまた美しい姿ですから。

 

リフォームには新築にはないこうした既存との折衝が色々生じます。悩ましいこともあるけど、そんな時にこそつくり手のものの考え方がわかるとも言えるなあ。今日は樹々を見ながらそう考えていた次第です。


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