夜に織る屋根

〈「木の駅」の記事を見て、そのご苦労がしのばれ、またその影響力に嬉しくなりました。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日はFacebookで知ったニュースから、皆さんに是非ご紹介したいものがありました。その写真を見て「うわ、行きたい!」と即座に反応してしまいましたので、その「いいね!」の気持ちを共有したくて。

 

先日は列車の車両デザインのことをこのブログに書きましたが、今日は列車が停まる場所、駅です。駅舎建築にも徐々に「木造リバイバル」が進んでいるというお話で、とても素敵なことだと感じ入った次第。

 

冒頭の写真がその記事に採り上げられていた駅(写真はWikipediaより)。東急電鉄の「戸越銀座」駅です。出来たのは昨年末だそうですが、これは東京23区内で初めてのこうした新設木造駅舎だとのこと。

 

何ともはや、清々しい光景ではありませんか。毎日こういう駅を使って通勤したいなあ、心からそう思いますね。この戸越銀座駅は1927年の開業で、今回は築90年でのリニューアルということになるようです。

 

東急は「東京都森林・林業再生基盤づくり交付金事業」を活用し、多摩産材によってホーム木造屋根、駅舎改修をおこなったとのこと。皆さん意外かと思いますが、東京都内にも木材の出せる森はあるんですね。

 

この記事で私がとても興味を惹かれたことは2つ。ひとつは「どうやって工事したの?」ということ。駅舎は一般的な建築と違って、非常に工事が難しいからです。なにせ、日中はずっと電車が通るのですから。

 

さらに、ダイヤが動いている最中は、架線に1500ボルトの高圧電流が流れている。そんな危険な場所で工事は不可能ですよね。記事によれば、終電から始発までの約2時間しか作業ができなかったとのこと。

 

その厳しい制約の中から生まれたのが、写真の美しい屋根。構法的には「シザーストラス」と言いますが、限られた時間を最大限使うため、重機を使わずにパーツ化された材料を現場で組合せてつくったそうです。

 

私の胸に響いたのは、その施工法が建築のかたちに表れていること。この屋根、何だか「織物」をイメージさせませんか。鶴の恩返しではありませんが、職人たちが夜ごと少しずつ織り上げた、反物のような屋根。

 

そしてもう一点私が感じ入ったのは、この新しい駅が生み出した波及効果についてです。この駅そばには有名な「戸越銀座商店街」があって、駅のリニューアルがその商店街にもまた活気を呼び戻している、と。

 

「(前略)リニューアルされた駅や街路も含めて、商店街の体の一部。この財産を慈しみながら、未来の戸越銀座商店街へとバトンをつなげられれば、と思っています」とは、ある商店主さんのお言葉。

 

難工事を超えて生まれた新しい木造駅舎が街のランドマークになる。出来上がった建築そのものだけでなく、プロとしてその建設の苦労がよくわかるだけに、尚さらそのことがとても喜ばしく感じられます。

 

駅舎での人の滞在時間は、短いものでしょう。しかし多くの人がそこを行き来する「人間交差点」としての役目がある。木の温もり溢れる駅舎がその役目に力を与える、それを立証した素晴らしい事例でした。

 

※元記事はこちらです。

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