歴史ある地理

〈休みの日、自分の中に溜められていた歴史のドラマを、地理と突き合わせて楽しむ時間でした。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日は本の写真で始まりましたが、7のつく日に書いている書評ブログとは違います。お休みをいただき自宅でゆっくり過ごした今日、またこの本を見返して新たな発見や学びがあった、そのことを書きたくて。

 

『ものしり江戸諸国(東日本編・西日本編)』、この2冊セットは10年以上前に入手したもの。近世(江戸時代)に興味があって時代小説や歴史研究書を好んで読む私には、まさに宝物と言っていい書物です。

 

「諸国」というのは、現在の都道府県とは違う、古来からの「国分け」のこと。延喜5年(905年)の「延喜式」以来、1200年という歴史をもっています。例えば今の兵庫県は「摂津国」と「播磨国」ですね。

 

都道府県制度とはたかだか明治以降のものですから、その歴史が違う。よって日本人の暮らしの中に深く浸透したその諸国の名称は、今も私たちの日常の言葉のあちこちに、しっかりと根強く残っています。

 

長野県は「信州」、山梨の酒は「甲州ワイン」、梅干しは「紀州名産」、島根の瓦は「石州瓦」。これらは信濃国、甲斐国、紀伊国、石見国のことですね。この「州」が9つあるから九州、国が4つあるのは四国。

 

この本にはそうした「諸国」の江戸時代の姿が描かれています。天保の頃の地図と現代のものとを比較しながら、現在の47都道府県とは違った68の区分と、そしてそこを統治していた各藩と江戸幕府の姿が。

 

地図だけでなく、国のあらましから始まり、名所旧跡のことや注目すべき歴史上の出身有名人、江戸の食文化としての地方の食べものも。各藩の天保年代の藩主、廃藩置県時の藩主のその後の爵位まで書いてある。

 

私はこの本を年に1回くらいのペースで開きますが、そのたびに新しい発見があります。それは、書いてあることは同じでも、日々の読書を通じて私の脳みその方に書きこまれていることが増えていくからです。

 

例えば、この一年で私は藤沢周平を読むようになりました。氏の作品に出てくる「海坂藩」は架空の藩ですが、著者の出身地である山形県、かつては出羽国(でわのくに)にあった「庄内藩」がモデルらしい。

 

でも本書を見ると、庄内藩は酒井家が治める14万石の藩。海坂は地域の小藩とされていますから、単に名前を替えただけではない。しかしその緩やかな弧を描く海岸線は、「海坂」の名に似合う気がしました。

 

他にも、最近観た映画『超高速!参勤交代』に出てきた、これも地方の小藩「湯長谷藩(ゆながやはん)」もチェックしました。陸奥国(むつのくに)・磐城、内藤家が治める1万5千石で、城はなく陣屋のみ。

 

他にも井上ひさしが描いた「駆け込み寺」こと東慶寺を相模国の古地図で探したり、江戸留守居役の日記を読んだので、その本国である長門国、萩藩毛利家について調べてみたり、興味は尽きません。

 

時代小説や研究書などを読んで自分に芽生えた新しい認識に、地理と歴史の両面から裏付けを与え、膨らみをもたせてくれる。そういう時間は私には非常に愉しいし、いつかその地を訪問したいとも思いますね。

 

そして年齢を重ねるにつれ、さらにこの近世探求は愉しくなる。私の志事「ものづくり」についても近世から学ぶものは多いはずですし、明治維新によって分断された日本社会のあり方も同様だと思うからです。

 

その分断を超えて江戸から続く「つながり」を想い出すこと。その大きな課題にこの「地理の歴史」を紐解くことは大いなる滋養となる、そんなことを今日もまた感じた私でした。


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