懐古の繭

〈気になっていたお店に偶然であう、嬉しい時間になりました。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。今日は画像多めでお送りいたしましょう。

 

今日は朝から、めずらしく大阪市内へ。このところずっと従事している「企業主導型保育事業」に関係する、大事な志事なのです。気持ちのいい快晴の元、谷町線の天満橋駅へと降り立ちました。

用事に向かう前に橋の上から一枚。水の都・大阪を感じる風景ですね。緑がとても心地良いです。

 

そして本来の志事を無事済ませ、さて、どうやって芦屋まで帰ろうか。気持ちいい天気だし、ちょっと歩こうか。てな感じでJR東西線・大阪天満宮駅まで、散歩がてらゆっくり歩いていくことにしました。

 

上の写真では向こうに見えていた天神橋を渡ったら、すぐに始まるのが日本一長いと言われる天神橋筋商店街。その南端から北上して駅に向かおうとした私を、思いがけない場所が待っていたのでした。

 

「あ、こんなとこにあったんや!」と思わず声が出たその場所とは、雑貨と喫茶のお店「kaico café(カイコ カフェ) 」です。小泉誠さんのデザインで、以前からかなり気になって、でも行けていなかったお店。

外観はこんな感じです。

 

ここは戦後間もないころの建物で、築70年ほど。元は質屋さんだったそうですね。そうした古い町家をリノベーションし、セレクトショップとして再生したもの。なんと、まさか今日、通りがかりで出会うとは。

 

これを逃してはならぬと、早速中に入ってじっくりと拝見させていただくことに。ちょうどお客さんも少なく、お店の方も親切に色々教えてくださいました。店とモノたちを共に楽しむ、よき時間となった次第。

 

この店には「kaico」という言葉が使われていますが、ここが出来る前から、小泉さんによる同名のキッチン用具のシリーズがありました。白いホーローと木で出来た、シンプルでどこか懐かしいデザインのもの。

この台の上にある白いのがそのkaicoのシリーズです。

 

kaicoという名前は、蚕の繭から生まれるシルクのような「白」と、そのどこか懐かしいデザインの「懐古」とを共に表現する言葉だと、そのシリーズの説明で読んだことがあります。上手いネーミングですね。

 

そのことを頭に浮かべつつお店を見せていただくと、ここが同じく「kaico」と名付けられたのがよくわかる気がします。古い建物の中に新しいモノたち、懐かしさの中にある「今」、そんなことを意味するのかと。

 

冒頭の写真は、2階にあったカフェスペースです。ここは元の構造を表しにした、まさに懐かしい落ち着きに満ちたスペースになっていました。そして、その中に何やら四角いハコが挿入されていましたよ。

全体はこんな感じ。

 

このハコは、無垢の杉の木を使った「Jパネル」という強い面材を組んでつくられたもの。他にも店内にたくさん使われていたJパネル、その白木のハコの中に畳が敷かれ、部屋の中の部屋になっている。

 

これが、かたちは四角いけれど、囲われていて天井も低く、まさに「木の繭」という感じの小空間なんです。ははあ、ここで「懐古」と「蚕」が出会うか、と私は勝手に想像して楽しんでいたのでした。

 

こういうユーモアある言葉の遊びは、小泉さん一流のもの。そのダブルミーニングの言葉に、実際の空間が同じくその双方の心地よさで呼応している。意味がふくらみ、空間の愉しさもさらに味わい深くなって。

 

昨日書いたように、私もこれから古い建物をリノベーションしていくことになりそうです。そのタイミングで良き事例であるこの店に出会うとは。お導きのようなその偶然がひときわ嬉しく感じられた今日でした。


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