時代のわけ・寿命のわけ

〈たくさん取り壊される文化住宅の理由を探る中で、半世紀後に同じことはやめたいと感じます。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

少し前にも書いたことですが、このところ通勤途中で建物の解体工事をたくさん見かけます。それも、いわゆる「文化住宅」という類の古い共同住宅が、かなりたくさん取り壊されているようなんです。

 

私は不動産関係の法律にはあまり詳しくありませんが、自宅のある堺でも、事務所のある芦屋でも、足並みを揃えたように文化住宅がなくなっているのは、きっと何か新しく出来た理由がある、と感じました。

 

なので少し調べてみたところ、どうもそれらしき法改正があったようです。ひとつは私も少し知っていたもの、もうひとつは全く知らなかった改正でした。どちらも「空き家問題」に関するものです。

 

私も少し知っていたのは、27年度施行の「空き家対策特別措置法」です。これは空き家のある土地の固定資産税が、従来は更地(建物のない土地)の6分の1だったのに、それが更地と同じになる、というもの。

 

これ即ち、空き家を所有している人は、今までの6倍の固定資産税を払わないといけなくなるということで、自分が住まないなら、借り手を探す、中古住宅付土地として売却するなどの対処が必要になります。

 

もうひとつ、これは私もわかっていなかったのは、平成28年の税制改正にある「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」です。専門のHPから、その具体的な内容をちょっと引用してみましょう。

 

相続時から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人の居住用家屋を相続した相続人が、その家屋(耐震性のない場合は耐震リフォーム後のものに限り、その敷地を含む。)または除却後の土地を譲渡した場合には、その家屋又は除却後の土地の譲渡益から3,000万円を控除することができる。

 

従来も自宅を売却する場合には、譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例がありましたが、それを「空き家の売却」にまで拡大することで不動産売買の動きを助長しようという狙いがあるようです。

 

このふたつの法改正を知ることで、なんとなく昨今の解体ラッシュの理由が見えた気がしました。古い文化住宅ですと、住環境として色々と問題があったりして、新しい借り手がつくことが少ないのでしょう。

 

また、耐震性のない空き家を耐震リフォームして売却するよりも、古い建物ならいっそ解体してしまって更地にする方が「売れる」、そして控除を適用できる、ということなのでしょうね。

 

今日の冒頭の写真は、私の通勤路にあるまさに解体途中の文化住宅です。今はもうほとんど見なくなった土壁、そして屋根を支える構造材の組まれ方なども、私から見れば「木の家の先輩」として目に映ります。

 

なので、そうした「税制」という経済の縛りだけで建築の生命が縮められていくという実情には、なんだかとても寂しい気持ちになりますね。しかし実際問題として、文化住宅に住みたいとは私も思いません。

 

1950~60年台の高度経済成長期にたくさん建てられた文化住宅。そのころ必要だったのはとにかく「数」だったのでしょう。残念ながら「質」ではなく、それが半世紀の後に、解体という結果になって表れた。

 

とはいえ、半世紀先のことを見通せというのはとても難しい話だし、自分もそんなことが出来るとは思いません。ただ、壊されていく木造建築が多くあるというこの状況から学ぶことはあると感じます。

 

人よ、同じ過ちを繰り返すべからず。高度成長期とは違うこの時代にこそ、望むべき「質」を備えた、半世紀後にも資産価値を維持できる建物、「解体した方がまし」ではない生き続ける建物を建てるべし。

 

ひとつの時代を担い、そして失われていく文化住宅という建築への、それが手向けというものではないでしょうか。


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