価値と標本

〈一般の方々には見慣れないサンプルで表現される「価値」について考えました。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日は箕面市彩都にあるKJWORKS本社「くらしの杜」へ。第1第3月曜日は、皆が集まる会議の日なのです。と同時に、私にとっては芦屋の事務所で出来ないことが出来る時間、でもあったりします。

 

いつだったか、今や商品カタログはほぼWEB上にあって画面で見られる、という話を書いたと思います。しかし本社にはWEBでは見られないモノが色々と揃えられていて、それの確認も大事な志事なんです。

 

実物のカタログもですが、もっとリアルな「サンプル」達がたくさん集められている。今までの家づくりで使ったモノ、その色や形や質感が、実際に使われる前の仕上げサンプルとして保存されています。

 

例えば、これはタイルやレンガの類。

これは左官や吹付仕上げのサンプル。たくさんの色やテクスチュアがあります。

 

こういう実物たちに触れながら、今自分が考えている家のイメージを確かめ、膨らませていくという時間も、とても大事です。そしてそれは写真やカタログには出来ない、実物でしか出来ないことなんですね。

 

そして、また少し模様替えをしたらしいこれらのサンプルコーナーで、今日私の興味を一番引いたのが、冒頭の写真の場所でした。皆さんはこれら置いてあるモノが何か、おわかりになりますでしょうか。

 

このモノたちは「窓」です。家の外壁に取り付くサッシのサンプルで、一般的にこういう窓サンプルたちは、実物をカットしてその断面を見せる形になっています。それぞれに特徴的な断面をしていますね。

 

では、わざわざカットしたサンプルをつくる意味は何かというと、この断面のあり方こそサッシの性能そのもの、と言えるものだから。なかなか見られないこの断面に、メーカーの想いが詰まっているから。

 

例えば、ガラスは何枚入るか、枠と障子(動く部分)の素材は何か、その見えてくる寸法はどうか、動かす機構と気密性を担保する仕組みはどうか、雨水を排水する部分の機構はどうか、などなど。

 

「窓」の性能について、プロはこの断面を見ればよくわかります。それを表現するために、各メーカーは皆このように窓をカットしたものをたくさんつくって、設計者や施工者にアピールするわけですね。

 

私も久しぶりにこれらの窓のサンプルをじっくり見てみましたが、各社それぞれに色んな工夫をしていることに感心しました。そして、これらはもうほとんど機械の断面模型に近いものだな、とも感じた次第。

 

先日も書いたように、住宅建築もどんどん「精密な既製品」でつくられるようになっている。特にサッシには昨今、気密水密性能の他に省エネ性能も強く求められていますから、どんどん機械化しています。

 

今日はあまり皆さんがご覧になったことのないこういうサンプルをお目にかけようと書き始めたのでしたが、その「機械化」の程度がこの数年でも大きく進み、複雑になっていることを感じてしまいました。

 

シベリアほど寒くなく、赤道直下ほど暑くない、四季はあるとは言えまだ「過酷」とは言いにくい、世界的に見て日本は大いに住みやすい国だと思います。その国でのこうした技術は、どのレベルが最適なのか。

 

私が家づくりを始めてからでも、そのレベルは怖いくらいに上がっています。それを悪いとはいいませんが、家づくりのポイントはそういう性能面だけではないことも、もっと広く認識されておくべきでしょう。

 

性能という、誰でもが客観的に数値として理解できるものだけで家の良さを判定することの怖さ。サッシの断面サンプルと、その他の仕上材料のサンプルたちには、そこに大きなベクトルの違いがありますね。

 

私たちプロは、性能だけでなく「美」や「安らぎ」など、家というものの多様な価値をお客さまに伝えるのが志事。精密なサッシたちを見ながら、却ってそういうことを強く感じていた今日でした。

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