合法化のさきは

〈今月可決された新法、いろいろな見方があると思います。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

あと少しで6月も終わりですね。今日は珍しく時事ネタ、今月可決された新しい法律のことを書こうと思っております。皆さんも御存知かどうか、でも冒頭の写真で何となく想像がつくのではないでしょうか。

 

それは、いわゆる「民泊新法」というもの。正しくは「住宅宿泊事業法」という名前の法律で、6月9日参議院で可決、来年1月にも施行される予定。色々と物議をかもしてきた民泊、いよいよ合法化なんです。

 

私も「家」に関する話なので記事などをよく読んでいますが、本法では「旅館業法」のような許可制でなく届出制で、ごく普通の住宅に他人を宿泊させる事業が簡単に始められるようになったと言えるでしょう。

 

いわゆるインバウンドの受け皿として、この新法の施行はおおむね良い評価をもって受け入れられているように思います。冒頭の写真の「エアビーアンドビー」などの仲介業者は、大喜びでしょうね。

 

実際この写真のようなサイトを見ると、国内でもとても素敵な部屋が「泊まってください」とアピールをしています。プロの私が見ていても「すごいな」と思いますから、その訴求力は高いのでしょう。

 

しかし、個人的には良いことばかりとは思えず、どうなってしまうのかと気になるところもあります。なにせ、「住んでいる家に知らない人が宿泊する」のですから。それはホスト家族だけの問題ではないはず。

 

まず、この住宅宿泊事業者の届け出には、用途地域による制限がありません。たとえば「第一種低層住居専用地域」というエリアには今までコンビニも建てられず、50㎡以下の小さな店舗しかつくれなかった。

 

それが、いきなり隣の家が「民宿」みたいになるかもしれない、という事態になったんです。それは、本来「用途地域」という制度がもつ「環境の区分け」という意味を根本から崩してしまうのではないか。

 

また、この民泊新法では、住宅宿泊業者の年間営業日数は180日以下となっています。一年の半分以下という目安ですね。しかしこれも他の先進国ではイギリスの90日など更に少ない。30日の国もあるそうです。

 

それが意味するものは何か。私が思うに、ひとつには「本業を守る」ということでしょう。ホテルや旅館といった日本の「おもてなし文化」をつくってきたプロ達を過剰に圧迫するような制度はよくない、と。

 

あるいはまた、ホストとゲストの間に異文化同士が起こす衝突あるいは軋轢が生じ、時に大きな問題となったのではないか。そして粗悪な部分を淘汰させるために規制を強化したのではと、そんな気もします。

 

なんだか書いていてだんだん悲観的になっていますね。申し訳ありません。もちろん上記のようなことも、実際には利用者による「選択」が機能しますから、さほど気にする必要はないのかもしれません。

 

しかし、インバウンドによる経済効果だけに目が行って、そうした日本人の住環境の維持、という目線をまるで失ってしまっているのではないか、そういう気がするので、今日はあえて苦言めいて書きました。

 

本来は「国際交流の愉しさ」をその動機とするような、そういうホストが多く生まれた方がいい。事業として大儲けできるような仕組みでない方がいい。そのために年間営業日数規制は大事、そう思いますね。

 

言わば「民泊」というものは、国の経済発展のための新しい方策などではなく、むしろ異文化交流や地域活性化のために新しい「うつわ」をつくること、なのではないでしょうか。

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