墨と炭の玄

〈この独特の表情に惹かれる人も多い、黒い外観がお目見えです。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

「木の保育園」リフォーム工事、いよいよ佳境となっております。以前にご紹介した「六角形の出窓の部屋」も、写真のようにほぼ形になり、子どもたちに使ってもらうのを今か今かと待っている様子。

 

この建物、元々「木の家」として新築したときから、その外壁は全面、黒く塗られた板張りでした。そして今回のこの増築部も同じで、既存部分もこれを機にもう一度、全面が黒く再塗装されたのでした。

 

この黒い板張りという建物の外観、実は私もとても好きなものです。私の自宅も、全てではありませんがその仕様にしていて、現在こんな感じです。

 

この黒い色の板張りは、今までも何軒もの木の家でお客さまからご希望されて採用しています。真っ黒にすることも、白い外壁とコントラストにすることもある。そしてそれらはとても日本的だと感じられます。

 

KJWORKSが現在使うのはドイツのオスモカラーをはじめとした自然派塗料ですが、この黒い板張りの外観がなんとはなしに「和」を感じさせるのは、やはりこの国に昔からある仕様だからなのでしょうね。

 

先達たちが板張り外壁で採用してきた「黒」と言えば、ひとつは「炭化」の黒でしょう。「焼き杉」なるモノを皆さんは御存知でしょうか。その名の通り、片面を焼いて黒く炭化させた板を、外壁に張る方法です。

 

もうひとつは、例えば「渋墨塗り」などの塗装系。渋墨とは、柿渋に松煙(松の木を焼いた煤)を混ぜて塗るもの。松煙を膠で固めたものがいわゆる「墨」ですから、擦った墨を塗っているのと同じ感じですね。

 

ではなぜこういう処理をした板張り外壁が多く使われたかと言えば、それはひとえに「永く保つ」ため。炭化の「炭」、そして同じ炭化物による「墨」も、非常に板の防虫・防腐性を高めてくれるからなんです。

 

その効果は、たとえば無垢の木の表札に墨で名前を書いておくと、その部分だけが劣化せず残ると言われるほどで、なかなかに素晴らしい。それに気付いた先人の知恵には大いに感心せざるを得ません。

 

こうした「墨」の黒には、あえて「玄(くろ)」と書きたいような奥行があるように思います。玄人の玄。辞書によると「奥深くて明かりの及ばない所の色」とあります。闇の色というか、表面の色ではない。

 

その奥行を感じさせるあたりから、この「玄」という字は「奥深い意味や道理」ということを表現するようにもなったのではないか。そんな風に感じます。たとえば「玄妙」とか「幽玄」といった言葉のように。

 

黒い板張り外壁が好きな方がそこまで意識しているかは別にして、その落ち着いた渋さを好む方が多くいらっしゃるのは確かです。日本人のDNAのどこかに刻まれた風景がそれを呼ぶのかも、と想ったりしますね。

 

この六角形部屋の外壁は、まだ塗りたてなのでツヤツヤしていますが、何度か雨に洗われれば落ち着いてくることでしょう。現代風の黒い外壁が徐々に「玄」の風合いを醸してくるのが、今から楽しみな私です。

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