経年の教え

〈赤松の床は、白から飴色へと大きく変化するのです。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日も「木の保育園」の現場へ行っておりました。室内もほぼ仕上がってきて、建物内部は月内で完了できそう。あとは外構工事をしっかりやらせていただき、竣工となります。開園は8月の予定。

 

今回、増築部分はあまりないのですが、既存部分でも場所によってどの程度改修するのかが違っているので、新しくなるところと元のままのところ、その調整が結構難しい場所もあちこちに見られます。

 

冒頭の写真の場所は保育室ですが、無垢の木の床をご覧ください。奥が既存の板をそのまま残すエリア、手前が増築と張替えで床が新しくなっているエリアです。窓からの木漏れ日がいい感じですね。

 

手前と奥、だいぶ色合いが違っていますが、この2種類の床は同じ赤松の板なんですよ。とても日当たりのよいこの部屋で、赤松の床はじっくりと日に焼け、13年の歳月が板を飴色に変えていたのでした。

 

杉でも桧でも、あるいは広葉樹の薄めの色の板も、木の色は徐々に濃くなっていくのが普通です。住んでいる人は毎日見ているので気づきませんが、こうして年月を経てから改修をすると、その差がよくわかる。

 

その中でも、この赤松の板は最も色が濃くなる度合いが大きいように思いますね。最初がとても白っぽいので余計にそう感じますが、どんどん色が深まり艶も出て、まさに飴色という感じに変化していきます。

 

今回、この色の違いをどう処理するか、という話も出ましたが、結局、特に何もしないことになりました。せっかく良い色になったものをまた白にもどす必要もないし、またこれから徐々に色は近づいてくるし。

 

それに、これは私の考えですが、子どもたちが保育室の床を指して「なんでこんなに色が違うの?」という疑問が出たほうがいいと思うんです。そこから、無垢の木の特性ということを話すことが出来ますから。

 

これはね、両方とも同じ木なんだよ。でもね、お日様の光を受けていると、だんだんと色が濃くなっていくんだよ。君が小学校に行く頃には、この白い方はもっと濃い色になって、こっちに近づいてくるよ。

 

きっと無垢の木の床で育った子は少ないでしょうから、最初は「汚れている」ととられるかもしれません。でも、足ざわりは両方同じなので、そこから「木が日に焼ける」ということを覚えてもらえたら。

 

床だけでなく柱や梁、窓の枠なども、全て13年経った既存部分の方がぐっと色が濃い。園長先生が13年住まわれた家が保育園になった、ということがその違いからも肌で感じられるのは、素晴らしいこと。

 

何より、こうしたことから子どもたちに感じてほしいのは、「新品が一番」という価値観からの脱却です。段々良くなる、というものがこの世にはある。最初がベストで段々悪くなるのとは根本的に違う世界が。

 

私がよくここに書くことですが、「ロングライフ」という価値を感じ、それを大切にする心が、21世紀に生きる私たち日本人には欠けていると思います。それはほんの100年ほどの間に大きく欠落した価値観です。

 

そうした価値観に通じる木の床の魅力を、そこを走り回る子どもたちに、眼と足の裏から直に感じてほしい。色違いの床に、そんな想いを託すような気分になった今日でした。

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