活写する手

〈梅田で少し寄り道、すごいエネルギーが詰まった展示を堪能してきました。〉

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

今日は所用の途中に梅田で少し時間がありましたので、またふらっと「建築屋向け展示スペース」へと立ち寄ってきました。グランフロントにある「LIXILギャラリー」です。今また面白いのがやっていますよ。

 

題して「超絶記録! 西山夘三のすまい採集帖」。このタイトルだけで、学校で建築を学んだヒト、あるいは住まいづくりに携わるヒトにはかなり刺激的なはず。なにしろ、あの西山夘三先生ですから。

 

と言っても建築関係でない方には何のことやら、という感じですよね。西山 夘三(にしやま うぞう 1911~1994年)は建築学者で、なかでも住宅のあり方を学問として研究する分野の、まさに泰斗といえる人物。

 

建築学科出身者は、必ず彼が提唱した「食寝分離論」を習っています。これを一から説明すると結構難解なので今日は割愛しますが、戦後の庶民の暮らしを西山が徹底的に調査した結果生まれた理論なんです。

 

食寝分離論が元になって公営住宅の標準設計が生まれ、住宅公団から始まって今に受け継がれている、いわゆる「nDKモデル」になったと言われています。さほどに大きな業績を残した学者だったんですね。

 

今回の展示は、西山がその理論を得るために徹底しておこなった「すまい採集」の記録です。庶民が如何に暮らしているか、その住まい方の実態を調査し、記録する。文字だけでなく膨大な写真や絵図を用いて。

 

「超絶記録!」とある通り、その密度がすごい。「庶民の住環境改善」という目的に向かって邁進する氏の情熱が、すごいエネルギーで伝わってきます。元々漫画家を目指したという氏の絵がまたとても良い。

 

こんな感じで、本当に様々なタイプの住宅が描かれています。その数は26。町家、農家、国民住宅、公団アパート、ドヤ、炭鉱住宅、木賃アパート、など、など。中にはバス住宅、電車住宅などというものまで。

 

戦後の復興期、人々はあらゆるものを「住まい」にしていたんですね。間取りに留まらず、そこでの暮らしそのものを、まさに活写した絵。妹尾河童さんもこういう絵を描かれますが、その先達を見た気分でした。

 

展示は他にも、<自伝的住み方記録>と題して、自分自身の住んだ家とその住まい方の変遷を記録したものもありました。夫婦二人から5人の子どもが育ち、巣立つまで。これもまた貴重な記録であるはず。

 

また、別のコーナーでは物凄く小さい字で書かれた日記や旅先の記録、はては縁日の屋台の並びまでが克明に記録され、考現学的様相を呈していました。要は何かを書き留め、描き留めるのが好きなんですね。

 

戦後の世に逞しく生きる人々、その姿を活写する手をもった研究者は、頭の中だけの理論構築でなく、己の能力を最大限に発揮する道に生きた。素晴らしい記録の数々から、そのことが大いに伝わる展示でした。

 

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